作業者の給料は数量制か時間制か?
駐在員時代の取引先のある日系工場では製品の特性上全数の外観検査を実施していた。ところが全数外観検査をしているのも関わらず外観不良は一定の割合で納入されていた。
それへの対応を含めその工場を訪問し改善施策について担当の方と打合せを持った。担当の方というのは日本人の管理者の方で、とても意欲的で全体を把握されていた。ただ見る範囲が広いので手が回らない、工数が足りていないという印象であった。
全数外観検査については次のような対策を示してくれ、実際に社内では成果も確認がいるので、今後の納入品でそれを確かめて欲しいといわれた。
この会社では外観検査員の評価・査定を不良の見逃し率(数量)と検査数量の2つで行っていた。その比率は50%、50%だった。これでは検査員は検査数量を追いかけることに重きを置いてしまう。その結果見逃し流出が発生してしまうと考えた。
対策としては、不良見逃し率と検査数量の2つの項目で評価をすることは変えないが、不良見逃し率の評価比率を高めた。具体的な比率は教えてくれなかったが、話から推定すると70〜80%程度にしたと思われた。
今日のポイント
またこれは比較的最近の事例であるが、別の会社では1部の作業工程の給料を数量の出来高制としていた。その工程の作業者は時間は一切関係なく作業した数量だけで給料が決まるようになっていた。
この会社で問題だったのは、出来高に品質面がまったく考慮されていなかったことだ。作業者は自分の作業後に1個1個出来具体を確認して次の作業者に渡すことになっているが、実際はほとんどノーチェックに等しい状態であった。
しわ寄せはその工程の検査にきていた。相当数の不良が検出され手直し作業に回されていた。最初にその工場を見たときはなぜこんなに手直し作業が多いのだろうと疑問に思った。
この工場では管理者が数量を確保することを最優先した結果、このようなシステムとなっていたようだ。現在は品質に対する考え方やシステムそのものを根本的に見直しているところだ。
補足
不良が多いのは給料が数量制になっていることだけが原因ではない。その工程の作業や作業をするための治具に問題があることもわかった。
そのあたりの製造技術力を高めないと不良の発生自体を大幅に減らしていくことは難しい。