会議の質を高める、ファシリテーションという技術

会議の質を高める、ファシリテーションという技術

会議の闇と光

一説によれば、社会人が1日に行う会議の平均時間は3時間だそうだ。

月の営業日を20日とすれば、我々は年間で平均720時間を会議に費やしている計算になる。

この時間に加え、会議には当然事前準備が必要となる。

資料作成は勿論のこと、参加者の選定、アジェンダの作成、会議室の確保、事前の説明と根回し、適度な睡眠、諦めの気持ち、後は野となれ山となれの精神、シビアな数字の報告中に参加者が全員気絶していて欲しいという無垢なる祈りなど、必要なことは山の如しだ。

 

しかし、毎回会議で小生も自覚している論点の穴を全て指摘され続けるのは、正に小生の不徳の致す所であろう。

何事も準備が肝心という社会人の鉄則を鑑みると、誠に慙愧の念に堪えない。

心を入れ替え、次回からは倍の祈りを捧げる所存である。

 

何故こうも人は会議に多くの時間を割くのだろうか。

小生は断言するが、会議が好きな人類はこの世に存在しない。

何故なら、会議の後に残るものは、ストレスと虚脱感と関節の痛みと机の上の涎だけだからだ。

 

しかし、ここで視点を逆にして考えてみるとどうだろうか。

人種、性別、宗教、国籍、斯くも人は多様性に満ちた生物であるが、「この会議早く終わらないかな」という切なる願いだけは、我々人類が追い求める普遍の願望と言えるのではないだろうか。

 

小生はこの言葉にこそ人類相互理解の可能性を感じずにはいられない。

早速有識者を集め、明日このテーマに関する会議を開こうと思う。

ファシリテーションという技術

さて、斯様に会議とは苦痛と可能性が糾える縄の如し存在であることが諸兄姉にご理解頂けた訳だが、昨今この会議を円滑に進めるための手法としてファシリテーションの技術が注目されていることはご存知だろうか。

 

ファシリテーションとは、グループによる活動が円滑に行われるように支援することであり、会議においては、合意に向けた論点整理や合意形成を促進する役割を指す。

ファシリテーションの利点は、慣れの必要な高度なフレームワークが不要な点、新人でもひっそりと始められる点にある。

 

ここでは何点か初歩的なファシリテーションの技術のポイントを紹介しよう。

初歩的故に、それがファシリテーションとは知らずに実践している諸兄姉も恐らく多いはずである。

 

①今回の会議の全体の位置づけを確認する。

定例系よりもプロジェクト系の会議の方が、効果が大きい技術である。

プロジェクトは、内容の複雑化に伴い大きな目的や最終ゴールを見失いがちになる。

それに伴い、会議の目的の位置づけも曖昧となるのが世の常である。

よって、まず会議を始める前に、この会議の全体の計画に対する位置づけや背景を、参加者全員が知っているはずと過信せずに確認することをお勧めする

②今回の会議の終了条件を確認する。

終わりのない会議、人即ちそれを拷問(又はGER)と呼ぶ。

着地点が明確でない会議は必ず横道にそれ続けて不時着するのが運命である。

逆に、参加者全員が何を決めればこの会議が終了するのかを確認することは、自然と議論を着地点へと導くことが可能となり、横道に逸れる意見を見つけやすくなるため、会議前にこれを確認することは非常に重要である。

③各アジェンダに対する時間配分を確認する。

会議とは、複数のアジェンダ(議題)を1回の時間で議論する場合が多いが、会議が紛糾するとつい1つのアジェンダに多くの時間を割いてしまい、結局何も決まらないということが往々にしてある。

会議全体を俯瞰し、各アジェンダに対して時間配分を予め確認することは、参加者へ時間内で結論を導く意識付けをすることに繋がる。

④会議で決まったことを確認する。

会議の目的は何かを達成するための合意形成と意思決定であり、決して「議論」や「情報共有」自体が目的ではない。

よって、会議終了時にその会議で決まったことを改めて全員で確認することは、初歩的だが非常に重要な確認である。

またその際にはA/I (だれが、なにを、いつまでにやるか)まで決定事項を落とし込みする必要があることも忘れてはならない。

 

以上は、あくまでファシリテーションの初歩である。

対立する意見の収束や、課題の抽出とその因果関係の整理など、ファシリテーションにはさらに上級の技術が数多く存在するため、不毛な会議でお悩みの諸兄姉には、この技術に対して学んでみることをお勧めする。

それが体系化された技術である以上、誰にでも習得が可能である。

より良い会議のために

会議は非常にコストが掛かる。

参加者を一定時間拘束し、主催者には準備時間が必要となる。

しかし、会議そのものには何の生産性もない。

会議自体の利益は0なのだ。

 

にも拘わらず会議を行うのは、参加者全員の知識と経験を集結させることで、会社や社員を成長・強化するための、最良の意思決定を行うためである。

逆に言えば、意思決定のない、ただ報告を聞くだけの会議はムダどころか、社員のモチベーションを低下させる諸悪の根源に他ならない。重要なことは如何にして会議の質を高めるかという視点である。

 

小生の祈りも、ファシリテーションもそうした会議の質を高めるための1つの手法であるが、これらが会議に悩みを抱える諸兄姉の一助の切掛となれば幸いである。

それでは、小生は明日の人類相互理解会議の祈りを捧げる時間が来たため、ここで擱筆させて頂く。


創業40年の製造業。ダイヤモンド事業からスタートしたテクダイヤは、会社本来の「人好き」が作用し、人との出会いを繰り返しながら業態変化を続ける。 現在はセラミック応用技術・精密機械加工技術・ダイヤモンド加工技術をコアとしながら先端技術のものづくりを支える。スマホやデータセンターなどの通信市場、更にはNASAやバイオ領域にも進出中。