2017/12/18 ものづくりニュース
人は困らせると工夫をする!?
金属を加工している会社でのこと。リーマンショックでここも受注が激減した。パートやアルバイトは辞めてもらったが、社員のリストラは社長が絶対避けるとして頑張った。
その会社のある工程では、今までは2人の作業者が昼間作業し、さらに夜勤で1人が作業していた。他の工程の作業者が減ったので配置転換が必要になりこの工程は昼間も1人の作業者でやることになった。
昼間1人になった作業者に対して社長はさらに効率化を求めた。実は、以前からこの工程はもっと効率的に作業ができると考えていた。ただ、受注が旺盛だったこともあり、その対応で手が付かずにいた。
作業者も現状を何も変えようとせず、自分の城としてぬるい作業にどっぷり浸かっていたというのが実態だった。しかし、経済状況がそれを許してはくれなかった。
その工程の作業者を1人にしたことだけでもある程度の効率化になったのも事実で、作業者の工夫・改善に多くは期待していなかったのもまた事実であった。
今日のポイント
ところが、1人になってしばらくすると、その作業者から改善提案が出てきた。しかも2つも。
1つは、加工作業前にワークにある前処理をしていたが、加工方法を改善することでこの前処理を不要にした。この前処理は、加工時の傷発生対策としてやっていたが、前処理をなくしても問題のないことが確認できた。
さらに前処理をした場合、加工後にこの前処理を取り除く作業が必要であるが、前処理自体をなくしたので、この後処理もやらなくて済むようになった。
2つ目は、加工機を1人で2台持ちにすることであった。この工程の加工機は2台あり、以前は1人1台で余裕を持って作業していた。作業者が1人になったが何とか2台動かしたいと考え、機械の配置を工夫することで常時2台稼働とはいかないものの、必要によって1人で2台を稼働させることが可能になった。
この作業者の人は実はとてもやる気があり、物の考え方もしっかりしていることがわかった。
補足
この作業者の人にどうしてこういう提案に至ったのかを聞いてみたら、「社長がとにかく効率化というので何とかしなくちゃと思って必死に考えた」と言っていた。
正直、社長に深い考えがあったかはわからないが、人を困った状況におくと何かしらの工夫をするという典型的な事例であった。人を困らせるのも必要なことだ。
この作業者は、しばらく後、現場リーダーに昇格した。
