中国工場リスクマネジメント・盗難
中国工場の赴任前研修で中国人マネジメントを担当しました。
その中で、中国工場のリスクマネジメントについても赴任者に考えてもらいました。
リスクのひとつである「盗難」に関して事例を前回紹介しました。
ある日系中国工場で生産に使用するインクが作業者によって横流しされていたのです。
この工場は現地化を進めており、工場のトップは香港人にやらせていました。日本人は品質担当者が1人いるだけでした。
工場の状況を把握するため、月次決算の日本本社への報告を義務付けていました。本社ではそれをチェックするという方法で管理をしていました。
当然資材の購入や在庫量に関する報告も含まれています。その数字だけを見るとインクに関して不自然な動きは感じられませんでした。
あるとき本社から出張者が来て、工場の全工程を見ました。その時は、特に何も感じることなく日本に帰りました。
その後、たまたま工場から報告される月次決算をその出張者が見る機会がありました。
吹付け工程で使用しているインクの使用量と樹脂の使用量を比較して見ると、インクの使用量がやけに多いとの疑問が頭をよぎりました。
それは、出張中に見た吹付け工程の作業を思い出してイメージして感じた疑問でした。
工場の品質担当の日本人に、実際に工程で使うインクの使用量と出庫の量が合っているかを確かめるように指示を出しました。
予感は的中していました。実際に工程で使っているインクの量は、出庫量ほど多くはなかったのです。
工場では製品に対して標準となるインクの使用量が定めてあります。なんとその標準が実際より多く水増しされていたのです。
1ヶ月分にすれば、相当量のインクが余分に出庫されており、それを別の業者に横流ししていたのです。
この例は、悪質かつ巧妙に仕組まれていました。
トップが日本人だったら防げたかと言えば、必ずしもそうとは言えません。よほど細かいところまでチェックをしないと発見できなかったと思われます。
日本では簡単に換金できないものでも、中国では比較的簡単に換金できるので、材料は何でも換金できると考え、数量チェックや持ち出しチェックをやる必要があります。
これは少し極端な事例かもしれないので、盗難を身近に感じてもらうには正直どうかなという思いもありました。
ただ、現実に起きているので、自社の中国工場も一度検証してみて欲しいものです。
中国人を信頼することはとても大事なことです。信頼できる中国人を作る、育てることもとても大事なことですね。
でも、信頼することとチェックをすることは別です。信頼してもチェックは怠ってはいけません。