中国企業・設計者を教育しないのはなぜ??
前回、中国企業の設計者には、設計者としての考え方、知識、経験、どれもが不足している。そのために設計に起因する不良が発生し大きな問題になった事例を紹介しました。
こうした問題を起こさないためには、設計者のレベルを上げることが重要で、そのためには設計者に対して設計の基礎の部分から教育していくことが必要となるとも書きました。
ある中国企業では、資本関係のない日本の販売会社からの提案で日本の品質管理を取り入れるため、専門家の指導を仰いでいます。設計に関しても、日本側がその道のプロに指導させることを考え、専門家を探していました。
ところが、設計を指導する専門家を中国工場に送り込むのは、中止するという判断が下されました。
設計者を基礎的なところから教育をして育成し、レベルを上げることが問題を解決するためのあるべき姿だというのは、間違いありません。日本側も十分理解しています。
ではなぜ育成する、レベルを高めることを止める判断をしたのでしょうか?
それは、設計者を育成することによるリスクを避けることを優先したのでした。ここで言うリスクとは、育った設計者が競合他社に自分の技術を売り込み転職してしまうことです。中国人設計者にすれば、より高い給料を払ってくれるところに行くという、ごく自然な行動と言えるのでしょう。
この中国企業がある地域には、同じ製品を作っている競合企業が何社もありますが、日本販社が日本的思想や技術を持ち込んだこともあり、技術的には他社を常にリードしていました。ところが皮肉にも技術力の高さが故に、この企業が競合企業への人材の供給源になっていたのです。
設計者もそうですが、品質管理、生産技術者なども知識を得ると競合に移っていく人が一定の割合でいるのです。日本でその製品の展示会があったときに、競合企業のブースについ最近まで在籍していた設計者が説明員としていたという話もありました。
このような事情から教育しないで、そこそこのレベルの設計者に設計をさせることにしました。それは競合への技術流出(漏洩)を防ぐことが目的です。仮に設計に問題点があった場合は、日本側で可能な限りチェックして事前に押える仕組みとしました。
あるべき姿と現実の問題をどのように埋めていくか、考えされられる事例だと思います。読者の方でも同じような状況になっている会社もあることでしょう。そうした場合、どのような対策を取っているのでしょうか。