中国企業は人が変わると退化することあり!!

中国企業は人が変わると退化することあり!!

前回は品管部の果たすべき役割についての話でした。

今回はまた別の中国企業での品管部の話です。

その企業の品管部・陳経理は、以前日本企業での勤務時代に品質管理の経験を積んできました。その日本企業の品管部では、品質管理部門は全社の品質管理を統括する役割があると教えられたこともあり、転職したこの中国企業でも品質管理の全社統括機能を品管部がもつべく、関連部門にどのように関わるのがよいかを考えていました。

当初、その中国企業では人員の問題など品管部に十分な体制を作ることはできませんでしたが、会社トップに要請し必要な人員の確保を進め、一歩ずつその業務の内容と範囲を広げていき目指す品管部の姿に近づけていっていました。

そのようなときに陳経理が突然退職しました。理由は、競合会社から引き抜かれたのです。聞いた話では、給料が1.5倍になったそうです。

その中国企業は新たな品管部経理を探して、品管経験豊富な人を入れることにしました。新しく入った品管部・劉経理は、QC7つ道具なども自ら品管部員に教育することができるなど品質管理の知識は豊富でした。

ところが劉経理が入社して1年くらい経つと、品管部と他の部門との間で軋轢が生まれてきていました。特に購買部が品管部に対して不満を募らせていました。

購買部では取引先評価の1つとして品質面を評価し、発注に反映させることを検討していました。そのためには、取引先ごとの受入検査の集計結果が必要です。このデータはどこの会社でも取っている当たり前のものです。

この中国企業でも陳経理のときには取引先ごとに集計していましたが、劉経理になってからは品目ごとの集計だけにしてしまったため取引先の評価ができなくなりました。購買部から以前と同じように取引先ごとに集計するように依頼しましたが、断られました。通常では考えられないことですね。

他にも、購買部では新規取引先評価の1つとして、生産工程がQC工程表通りに管理されているかをチェックしてもらいたいと品管部に要請しましたが、やはり断られました。

明らかに品管部の業務が後退しています。なぜこのようなことになってしまったのか調査しました。その結果わかったのは、劉経理は自分たち、つまり品管部の仕事を増やさないことを考えているようでした。

以前も別の事例で紹介しましたが、中国工場の場合、仕組みではなく特定の人の力によって業務が進んでいることが少なくありません。

その人がいる間は問題が出ないのですが、今回のように退職したことで、その人がいなくなるなどした場合、業務が今までと同じように進む保証はなく、問題(不良)が発生する可能性が高いと言えます。

例え品質のよい中国工場でも、それが特定の人によってなされているのか、仕組みによってなされているのかは、よく見極めておきましょう。人だった場合、その人がいなくなったときは要注意です。

 

出典:中国企業は人が変わると退化することあり!!


KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント◎電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導及び品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走 ◎東京都/千葉県商工会連合会専門エキスパート(品質管理、製造業指導) GCS認定コーチ◎日本生産性本部経営アカデミー講師 名古屋外国語大学非常勤講師 セミナー/企業研修講師多数◎中国工場コンサルティング実績 日系中国工場品質改善及び管理体制の見直し(広東省)、中国企業品質管理体制の構築(福建省1社)、中国企業労務人事管理監査対応指導(パートナーコンサルタントと共同で実施:広東省1社)、米国D社の労務人事監査指摘事項への対応を指導、中国工場品質管理体制の構築(広東、大連など2社)、中国工場運営管理支援(広東1社)、外観検査の精度向上指導(広東1社)、中国生産委託先工場監査代行(広東1社) 国内工場管理の見直し及び製品コストダウン、外灯製造会社の5S指導、金属加工会社の品質管理・改善、生産性向上指導(1社)、金属加工会社の組織再構築、経営改革指導(1社)、板金塗装会社の5S指導(1社)、環境関連企業の新工場立ち上げ支援(1社)◎製造業向け社員研修実績 中国人管理者教育(広東、大連、厦門など3社)、コーチング研修(2社)、来日した中国企業スタッフ研修、中国赴任前研修(パソナ様)、若手社員向け中国工場の問題点と対処法(和歌山県工業技術センター様)、中国工場品質管理講座&異文化コミュニケーション(富士通テレコムネットワークス様)、仕入先様品質管理勉強会 テーマ:中国工場での品質管理の進め方(株式会社オートバックスセブン様)、中国への生産委託に伴う工程/品質管理のポイント(N社様、I社様) ◎著書 こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>(日刊工業新聞社)、雑誌「標準化と品質管理」2012年8月号特集記事執筆(日本規格協会)、外観検査の不良見逃し・ばらつき低減(技術情報協会・共同執筆)、通信教育講座「外観目視検査の進め方と留意点」担当講師(テキスト執筆、添削指導) ◎KPIマネジメント http://www.prestoimprove.com/index.html ブログ「中国工場での品質管理・品質改善」https://ameblo.jp/prestoimprove/