中国では8時に着替えてOKか?(コメント2)

中国では8時に着替えてOKか?(コメント2)

メルマガでは始業時間に作業者がどういう状態になっていないといけないかについてアンケートを取った。その結果をお知らせする(ここまで既報)。

 

8時までにタイムカードが押されていればよい:(2票) 9%
8時に自分の席(作業場)にいればよい:(3票) 14%
8時には作業を開始できるようにさせている:(9票) 41%
8時に朝礼を行うので、それに遅れてはいけない:(6票) 27%
その他(わたしの考えはこうだ):(2票)  9%

 

前回3人の方のコメントを紹介したが、今回も引き続き読者の方からいただいたコメント紹介する。

今日のポイント

最初は、亜都常泊者さんのコメントです。

『私の出張先の工場では始業のベルまでに作業が始められるように持ち場に着いていないと遅刻ですね。

しかし作業内容によって、出勤時に着ている作業服でそのまま始められる部署と、出勤後にクリーンルーム用の作業服に着替える必要がある部署があり、後者の作業者から不満が出た事があると聞いています。

その際の不満の内容は「作業着を脱着する分、昼休みの実質休憩時間が他部署より少ない」とのことだったそうですが、休憩時間を調整すると次は「出勤・退勤時はどうなのか」となることは分かりきっているので、「クリーンルーム作業手当て」を僅かですが月給に追加で支給することで解決したそうす。

で、遅刻2回だか3回するとその月の手当てはカットすると言うルールも作り時間厳守に役立てているようです。』

 

とても現実的な事例をコメントしていただきました。この事例の不満は日本でも出るものでしょうね。解決策と手当カットのルールは参考になった方もいるのではないでしょうか。

次に通りすがりさんからのコメントです。いつもながらわたしのあいまいな問いかけに対し、通りすがりさんなりの指針を示してくれています。

『根本先生は、この問題の本質をどのように捉えるか? チョッと触れておりましたが、それ以上の言及が無いようなので、私の経験を述べてみましょう。

「始業開始時間を守り、労務コスト上の損失を招かないようにする」との観点からの論述が多いようですが、「職場、従業員、管理職を含めた全社員について規律性を一定レベル以上に確保する」と云うのが本質的な捉え方と考えます。

日本でも同様の例はありますが、特に中国人(大陸の)にとっては、色々な要因からこの確保=躾が大切と思います。知り合いの台湾の経営者ですが、社名を「躾」としたくらい、重要に考えている例もあるくらいです。

 

日本でも地方に行けば、時間には結構、ルーズで、○○(地名)時間とか呼んで、集合時刻や開始時刻から3、40分遅れるのは当たり前といった風潮は、今も残っているように思います。

しかしそんな地域でも工場勤務となると、時間厳守がキチンと躾られて、遅刻等は仕方が無い事では済まないようになっております(良くも悪くも、初等教育から刷り込まれた集団の力が働きます)。

しかし中国やマレーシアやメキシコでは、そんな刷り込みはありませんし、特に中国では個人の主張が強いので、会社としての規律性を確保するのが大変です。

 

合弁企業では合弁先の社風の影響を受けるのですが、主に経験したのは独資企業でしたので、ゼロからその規律性を確保するのが日本人管理者の役目で、かなりの部分を占めておりました(例:真夜中に工場の守衛所に抜き打ちで訪問、警備員が寝込んでいないか、友達を引き込んで遊んでいないかをチェック) 。

そんな仕事が管理職の仕事と思う向きもあるかも知れませんが、あるレベルの規律性が確保できませんと、単純な労務コスト損失に止まらず、あらゆる所で工場管理のコスト増の原因になるのです。

窃盗対策や器物破損対策、はたまた横領対策など、目に見えない管理コストの増大を招くのです。

 

今回の場合は、時間と就業についてルーズな状況を許してはいけないということであって、始業時間のあるべき状態につきましては、その会社によってキチンと決められ、守られていればどの選択肢でも良いのではないでしょうか。

日本の工場では、タイムカードが無い所も多く(私が在籍した会社もそうでした)、物事の周知徹底に掛ける労力も少なくて済むのが通例ですが、そこまでの状態の中国企業は、未だ見たことは有りません。

単に「始業時間」ということではなく、そういった例を目標に(企業文化として)考えても良いのではないでしょうか?』

 

通りすがりさん、いつも理路整然とまとめていただいてありがとうございます。

前回も少し書きましたが、今回は始業時間を守れないこと、守らせられないことが工場全体の規律に及び、工場運営に影響が出てくることを懸念してのことです。

ただ、Kさんのようにコストという視点からもコメントいたたいとことは、うれしく思っています。

補足

コメントいただいたみなさん、深堀していただいて感謝しています。いつもわたしのあいまいで、焦点のぼけた問いに真摯に向き合っていただいています。

わたしは、すこしぼけた問いでよいと思っているところがあります。あまりにびしっと焦点を絞った問いでは議論の余地が限られてくるように思うからです。

すこしぼけた問いにみなさんなりの解釈、考えを入れていただくことによって得られる気づきが多いように思います。実際わたしは、いつも多くの気づきをもらっています。(^^;

出典:中国工場での品質管理・品質改善


KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント◎電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導及び品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走 ◎東京都/千葉県商工会連合会専門エキスパート(品質管理、製造業指導) GCS認定コーチ◎日本生産性本部経営アカデミー講師 名古屋外国語大学非常勤講師 セミナー/企業研修講師多数◎中国工場コンサルティング実績 日系中国工場品質改善及び管理体制の見直し(広東省)、中国企業品質管理体制の構築(福建省1社)、中国企業労務人事管理監査対応指導(パートナーコンサルタントと共同で実施:広東省1社)、米国D社の労務人事監査指摘事項への対応を指導、中国工場品質管理体制の構築(広東、大連など2社)、中国工場運営管理支援(広東1社)、外観検査の精度向上指導(広東1社)、中国生産委託先工場監査代行(広東1社) 国内工場管理の見直し及び製品コストダウン、外灯製造会社の5S指導、金属加工会社の品質管理・改善、生産性向上指導(1社)、金属加工会社の組織再構築、経営改革指導(1社)、板金塗装会社の5S指導(1社)、環境関連企業の新工場立ち上げ支援(1社)◎製造業向け社員研修実績 中国人管理者教育(広東、大連、厦門など3社)、コーチング研修(2社)、来日した中国企業スタッフ研修、中国赴任前研修(パソナ様)、若手社員向け中国工場の問題点と対処法(和歌山県工業技術センター様)、中国工場品質管理講座&異文化コミュニケーション(富士通テレコムネットワークス様)、仕入先様品質管理勉強会 テーマ:中国工場での品質管理の進め方(株式会社オートバックスセブン様)、中国への生産委託に伴う工程/品質管理のポイント(N社様、I社様) ◎著書 こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>(日刊工業新聞社)、雑誌「標準化と品質管理」2012年8月号特集記事執筆(日本規格協会)、外観検査の不良見逃し・ばらつき低減(技術情報協会・共同執筆)、通信教育講座「外観目視検査の進め方と留意点」担当講師(テキスト執筆、添削指導) ◎KPIマネジメント http://www.prestoimprove.com/index.html ブログ「中国工場での品質管理・品質改善」https://ameblo.jp/prestoimprove/