不具合発生の陰に変化点あり!?

不具合発生の陰に変化点あり!?

スポット溶接のある部品でその溶接部が断裂するという不良が発生した。しかも不良率はなんと60%にもなる。現場は当該部品の投入を中止せざるを得なかった。

幸い2社購買していたので、他社製部品在庫があり生産への影響は当面回避できた。しかし、早急に解決しないといずれ生産に影響が出ることになるのは明白であった。

他社製の部品では何の問題もなかったことから、自社の生産工程の問題でないことも確認できた。問題となったメーカー製も以前のロットでは何の問題もなく生産できていた。

 

メーカーの原因調査報告によると溶接部の曲げ加工をする際に治具を使う。その治具の調整を不具合対象ロットの生産とほぼ同時期に行っていたことがわかった。このことより治具調整の不備によって発生したものと断定していた。

今日のポイント

この報告を最初に受けた時はなるほどと思い原因がわかったとひと安心したが、何か引っかかるものがあった。本当に治具調整で急にゼロだった不良が60%も発生するのだろうか。

治具調整はめったに行わないものではなく、比較的頻繁に行うものであった。それはメーカーの調整記録からも確認できた。それなのにこのときの調整だけが悪く、これほどの不良を発生させてしまうのか疑問であった。この疑問をメーカーに投げて、再度徹底した調査を行うよう要請した。

1週間後に再調査結果の報告があった。その調査結果には驚くべきことが書かれていた。なんと溶接部に使う材料に違い、変化点があることが分かったのだ。

 

使用する材料には当然規定の厚さがあるのだが、当時材料の確保ができずに自社在庫の違う厚さの材料をその厚さまで圧延して使用していたのであった。もちろん、材料組成は同じものであるが。

材料の特性は非常に微妙で、圧延によって大きな影響を受けることは想像できるはずだ。材料を自社で圧延した適否はともかく、これで今回の不良の真の原因が特定できた。

やはりこれだけ大きな不具合が発生するには、原因となるそれなりの変化点がある。危うく全然違う原因で片を付けるところであった。

補足

もともとこの材料の納入リードタイムは足が長くかかるものであった。常にお互いに情報を出して注意してやっていた。

今回メーカーで材料切れを起こしたのは急激な注文数アップによるところも大きい。であればこそ、正直に材料在庫の問題をいって対応を相談できればよかったのだが。

そこまでの関係を作れなかったことは購買部門としての反省点である。

出典:中国工場での品質管理・品質改善


KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント◎電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導及び品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走 ◎東京都/千葉県商工会連合会専門エキスパート(品質管理、製造業指導) GCS認定コーチ◎日本生産性本部経営アカデミー講師 名古屋外国語大学非常勤講師 セミナー/企業研修講師多数◎中国工場コンサルティング実績 日系中国工場品質改善及び管理体制の見直し(広東省)、中国企業品質管理体制の構築(福建省1社)、中国企業労務人事管理監査対応指導(パートナーコンサルタントと共同で実施:広東省1社)、米国D社の労務人事監査指摘事項への対応を指導、中国工場品質管理体制の構築(広東、大連など2社)、中国工場運営管理支援(広東1社)、外観検査の精度向上指導(広東1社)、中国生産委託先工場監査代行(広東1社) 国内工場管理の見直し及び製品コストダウン、外灯製造会社の5S指導、金属加工会社の品質管理・改善、生産性向上指導(1社)、金属加工会社の組織再構築、経営改革指導(1社)、板金塗装会社の5S指導(1社)、環境関連企業の新工場立ち上げ支援(1社)◎製造業向け社員研修実績 中国人管理者教育(広東、大連、厦門など3社)、コーチング研修(2社)、来日した中国企業スタッフ研修、中国赴任前研修(パソナ様)、若手社員向け中国工場の問題点と対処法(和歌山県工業技術センター様)、中国工場品質管理講座&異文化コミュニケーション(富士通テレコムネットワークス様)、仕入先様品質管理勉強会 テーマ:中国工場での品質管理の進め方(株式会社オートバックスセブン様)、中国への生産委託に伴う工程/品質管理のポイント(N社様、I社様) ◎著書 こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善<虎の巻>(日刊工業新聞社)、雑誌「標準化と品質管理」2012年8月号特集記事執筆(日本規格協会)、外観検査の不良見逃し・ばらつき低減(技術情報協会・共同執筆)、通信教育講座「外観目視検査の進め方と留意点」担当講師(テキスト執筆、添削指導) ◎KPIマネジメント http://www.prestoimprove.com/index.html ブログ「中国工場での品質管理・品質改善」https://ameblo.jp/prestoimprove/