セブの橋の下で

セブの橋の下で

橋の下で暮らしている少年たち。それがこの写真だ。

セブの橋の下で

入社二年目の終わりに初めて海外に行った。

場所はフィリピンセブ島。

セブ島の日本での印象は南国のリゾート地ではないだろうか。

出張で行くと、現地では高級なリゾートホテルに宿泊することになる。

しかし、ホテルから出た瞬間にこんな光景であふれかえっている。

 

この子たちの目の前には日本人でも高いと思うような高級スーパーがあるが、その横はドブ川と汚れた掘っ建て小屋である。

川の水は白く濁って何も見えない。

道路に信号はなく、ある程度人がたまったら大勢で車を制して横切る「みんなで渡れば怖くない」理論が展開されているし、原付1台に4人ほど乗っていることもある。

 

僕は橋の下の彼らの人生に関与できない。

おそらくこの子たちが一生入ることのない高級ホテルで、一生食べることのない高級朝食バイキングを食べる。

そうして送迎のバスで会社に行くだけだ。

 

特別に恵まれているわけではないと思う。

もっと裕福な人から見たら憐れむような生活なのかなとも思う。

しかし、毎日屋根の下の布団で寝て、食事も服もあって、趣味もできている。

そうして買った一眼のカメラをもって出張に来て、彼らの写真を撮らせてもらった。ピースをしてくれた。

 

彼らはそんな僕をどう思っただろう。

妬んだだろうか、嫌っただろうか、あるいは何も感じなかったかもしれない。

それでもなんとなく、ごめんねと小さく言ってしまった。

 

仕事を始めてから、知らない物や人を見ることが多くなった。

教科書の上、学校の中、それはとても閉じた空間だ。

世界はもっと煩雑で、理不尽で、無謀で、無駄で、そしてずっと開けている。

自由すぎて、何でもできるようで、情けないくらい何にも出来ない。

 

自分のやりたいこと、できること、できるようになりたいこと。

子供の頃の夢は何になりたいかだった。けれど今はどうなりたいかと考える。

 

橋の下の彼らはこれからどう生きていくのだろうか。

僕はこれからどう生きていくのだろうか。

 

通勤電車から見える景色が毎日少しでも変化していけばいいなと思う。


創業40年の製造業。ダイヤモンド事業からスタートしたテクダイヤは、会社本来の「人好き」が作用し、人との出会いを繰り返しながら業態変化を続ける。 現在はセラミック応用技術・精密機械加工技術・ダイヤモンド加工技術をコアとしながら先端技術のものづくりを支える。スマホやデータセンターなどの通信市場、更にはNASAやバイオ領域にも進出中。