その材料は本物、偽物?
ある会社でプラスチック部品を組込んだ後に製品で不具合が発生した。この部品は力を受けても摩耗しにくい特徴を持っていた。
ところが製品で発生したのは、そのプラスチック部品が異常摩耗し製品性能に不具合をもたらすというものであった。原因を探るべくその部品を作っている加工業者に行った。
最初に加工業者に行ったときには、その工程での変化点は見つからず原因を特定することはできなかった。異常摩耗したという事実から当該部品の材質に疑いが持たれた。不具合が発生した部品の材質を分析したところ指定していた材質と違うことがわかった。
違う材質のものでも製品段階ですべてが異常摩耗になるわけではなく、悪い条件が重なると異常摩耗が発生することがわかった。その発生率が低いこともわかった。しかし、製品の保証上、異常摩耗は発生してはいけないので、材質を指定していた。
今日のポイント
この事実を持って加工業者に行ったのだが、加工業者は「そんなことは知らない、うちは指定された材料をちゃんと使用している」の一点張りであった。
指定の材料メーカーが加工業者に納入している量と買っている量を比べると、材料メーカーからの納入量がはるかに少ないことが分かり、このことからも違う材質の材料を使ったことがわかる。
実はそれでも加工業者は「知らぬ、存ぜぬ」の一点張りであった。この加工業者とは長い付き合いであった。
長い付き合いの会社であったがこちらを裏切るような行為に及んでいた。ただし、付き合いに劇的な変化があったのも事実だ。どういうことかというと、このプラスチック部品の加工を社内に取り込む内製化を進めたのである。そして、加工業者への発注数量は減っていって、経営的に苦しくなったのも事実だった。
内製化すること自体は会社の方針であり仕方ないと考えるが、この加工業者に対するフォローが不足していた。発注数量減による加工業者の経営への影響に配慮して、発注減をカバーするための時間的余裕を与えることが必要であったのではないか。
補足
指定した材料よりも違う材料の方が価格的にだいぶ安く、その差額を取るためにやったと思われる。
その加工業者の担当者は購買経験が浅く、そのあたりのフォローが足りなかったようだ。ただし、これは担当者だけの責任ではなく会社としていろいろなケースを想定して対応しておく必要があったといえる。
たとえ長年の付き合いであっても、追い込まれると何が起きるかわからない。高い代償を払うことになった。