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電力会社10社で1兆円超の利益を上げるも、売上高は前年比4.7%減少 ...

電力会社10社で1兆円超の利益を上げるも、売上高は前年比4.7%減少 (石田雅也,[スマートジャパン])

 10社すべてが黒字を計上したとはいえ、内容を見ると楽観できる状況にはない。第3四半期(4〜12月)の売上高は10社の合計で14兆3234億円、前年から4.7%の減収だった(図1)。減収額は7129億円にのぼり、年間では1兆円近くに達する見通しだ。

図1 2015年度第3四半期(4〜12月)の売上高・営業利益(いずれも連結決算)と販売電力量

 売上高が大幅に減った理由は主に2つある。1つは販売電力量が前年同期と比べて2.9%減少したこと、もう1つは電気料金に上乗せする「燃料費調整額」が2015年の後半からマイナスに転じたことだ。電力会社の経営を圧迫してきた化石燃料の輸入価格が劇的に下がり、燃料費が減少したためである。原油とLNG(液化天然ガス)の輸入価格は半減して、円安・ドル高の影響も吸収した(図2)。

図2 為替レート(左)と原油・LNG輸入価格(右)の変動(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力

 燃料費調整額の単価は3〜5カ月前の輸入価格を平均して決めるために、化石燃料が値下がりする局面では電力会社に差益が生まれる。各社の営業利益が改善した大きな要因になっている。最大手の東京電力の決算の中身を見れば一目瞭然だ。

 東京電力の収入は単独決算では前年から4423億円も減少した。販売電力量の減少分が1450億円、燃料費調整額の影響による減少は4650億円にものぼる。一方で固定価格買取制度による再生可能エネルギーの賦課金と交付金が合わせて1816億円の収入増をもたらした(図3)。

図3 東京電力の収入の内訳(単独決算。画像をクリックすると拡大)。単位は億円。出典:東京電力

 これに対して支出のうち燃料費だけで7361億円も減っている。販売電力量の減少に伴う火力発電の削減効果が1340億円、さらに燃料の輸入価格の減少効果が6020億円もある(図4)。収入に計上する燃料費調整額との差益は1370億円になり、東京電力の連結決算による増益額1639億円の8割以上を占める結果になった。

図4 東京電力の支出の内訳(単独決算。画像をクリックすると拡大)。単位は億円。出典:東京電力

関西電力の値上げ効果は950億円

 10社の中で増益額が最大の2470億円に達した関西電力の状況もさほど変わらない。関西電力は6月に実施した電気料金の値上げで950億円の収入を増やした(図5)。ところが販売電力量が4.4%も減少した影響で860億円の収入が減ってしまった。その差額はわずかに90億円である。全体では燃料費調整額の減少によって前年比で1110億円の収入減になった。

図5 関西電力の収支の内訳(単独決算。画像をクリックすると拡大)。出典:関西電力

 一方で燃料費と燃料費調整額の差益は1472億円にのぼり、増益額の約6割を占めた。加えて販売電力量の減少で他社からの購入電力料が617億円も少なくて済んだ。関西電力は原子力による高浜発電所の3号機を1月29日に再稼働して、2月中に営業運転へ移行する予定だ。再稼働の効果で経費は大幅に減る見通しだが、販売電力量の減少に歯止めがかからなければ収支の改善は小幅にとどまる。

 関西電力よりも早く8月から10月にかけて川内原子力発電所の1・2号機を再稼働させた九州電力では、第3四半期の決算から経費の削減効果が表れた。燃料費の総額は前年と比べて2330億円も減って、増益額を大きく上回っている(図6)。燃料費の削減額のうち、化石燃料の輸入価格による減少分が1439億円で、原子力に移行したことによる減少分が430億円ある。

図6 九州電力の収支の内訳(単独決算)。単位は億円と%。出典:九州電力

 九州電力が4〜12月の9カ月間に自社発電と他社受電で調達した電力量を見ると、火力は前年と比べて2割近く減っている(図7)。その代わりに原子力が増えたほか、他社から受電した再生可能エネルギーの電力量も大幅に伸びた。

図7 九州電力の発受電電力量の内訳。単位は100万kWhと%。出典:九州電力

 特に太陽光による電力量は9カ月間で47億kWh(キロワット時)にのぼり、発受電電力量の7.5%を占めるまでに拡大した(図8)。このほかに風力・水力・地熱・バイオマスなどを加えると18.6%になり、前年から4.2ポイントも上昇している。同じペースで太陽光が増えると、2016年度には再生可能エネルギーの比率が20%を超える。2030年の国全体の目標値(22〜24%)に早くも近づく。

図8 九州電力の太陽光・風力の購入電力量(左)と発受電電力量に占める割合(右)。出典:九州電力

 再生可能エネルギーの増加に伴って利用者が負担する賦課金は増えていくものの、今後は小売全面自由化の効果で電気料金が下がることは確実だ。合わせて燃料費調整額が下がれば、賦課金の増加分を吸収して料金水準は低下していく。電力会社は販売収入の減少と燃料費の減少を続けながら、微妙なバランスで利益を上げる道を模索することになる。


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