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難航した洋上風力発電プロジェクトが前進、下関市の沖合に大型風車15基 ...

難航した洋上風力発電プロジェクトが前進、下関市の沖合に大型風車15基 (石田雅也,[スマートジャパン])

 洋上風力発電を計画している海域は、下関市の西部にある安岡地区の沖合だ。西に向けて九州の北部まで広がる響灘(ひびきなだ)の一部で、夕日の名所としても知られている(図1)。この海域を対象に前田建設工業が4年前から洋上風力発電の開発プロジェクトを推進してきた。いよいよ大規模な風力発電所の建設に必要な環境影響評価の準備書を11月2日に公開して地元との最終調整に入った。

図1 「安岡沖洋上風力発電事業」の景観イメージ。出典:前田建設工業

 現時点の計画によると、安岡地区の西の陸上から沖合に約1.5キロメートル離れた海域に合計15基の大型風車を設置する(図2)。北から南へ2列で配置して、海底ケーブルで陸上まで電力を送る予定だ。対象の海域の広さは5.8平方キロメートルに及び、水深は10〜20メートルで浅い。設置方法は構造物の重さを生かした重力式を採用する。

図2 風車の配置計画。出典:前田建設工業

 風車のローター(羽根)の回転直径は130メートルになり、水面からの最高到達点は150メートルを超える(図3)。1基あたりの発電能力は4MW(メガワット)を想定している。15基の合計で60MWに達して、国内の洋上風力発電所では最大級になる。総事業費は約400億円を見込んでいる

図3 風車の設置イメージと大きさ。出典:前田建設工業

 事業の対象になる響灘には大陸から強い風が年間を通して吹きつける。洋上風力発電に適した場所で、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は29%を見込んでいる。年間の発電量は1億5000万kWh(キロワット時)にのぼる見通しだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると4万2000世帯分になり、下関市の総世帯数(13万世帯)の3分の1に相当する。

 固定価格買取制度では洋上風力発電の買取価格を1kWhあたり36円(税抜き)で設定している。発電した電力の全量を買取制度で売電すると、年間の収入は55億円に達する。買取期間の20年間の累計では売電収入が1000億円を超える大規模な事業になる。

 環境影響評価の手続きは通常であれば準備書の公開から1年以内に完了する。順調に進めば2017年内に手続きを完了して工事に入ることが可能だ。工事期間は約2年の想定で、試運転を経て2020年の春に営業運転を開始できる。

住民の反対が根強く、景観の問題も残る

 ただし地元では当初から住民の反対が強く、現在の計画通りに実施できるかは流動的だ。特に風車から近い地域では騒音や振動による健康被害を懸念する声が上がっている。このほかに景観の問題もある。下関市では2013年に「下関市景観計画」を施行して、その対象に響灘を含む沿岸地域を指定した(図4)。洋上風力発電を実施する安岡沖も含まれている。

図4 「下関市景観計画」のゾーン区分と景観形成方針(画像をクリックすると拡大)。「行為地」が洋上風力発電の実施海域。出典:下関市景観審議会

 2016年8月に開催した「下関市景観審議会」の場で、安岡沖の洋上風力発電事業について審査した。その結果をもとに、3点の要望事項を事業者の前田建設工業に伝えている。特に風車を2列に配置することが視覚的に問題になると判断して、可能な限り1列に配置すること、2列に配置する場合には陸地から離して等間隔で設置することを要望した。

 しかし前田建設工業が11月2日に公開した準備書では、風車を2列で配置する計画は変わっていない。プロジェクトを開始した当初は風車を3列に配置して、沖合750メートルほどの至近距離に設置する予定だった。地元の意見をもとに2列の配置に変更して、陸地から2倍の距離まで離した経緯がある。一般的に準備書の内容から大きな変更が加わるケースはまれだが、環境影響評価を管轄する環境省や地元の自治体の意見によっては変更の可能性も残る。

 国内では北海道から九州まで10カ所を超える地域で洋上風力発電の導入計画が進んでいる(図5)。その中でも実証事業を除く商用ベースでは、安岡沖のプロジェクトが最も早く運転を開始する状況になってきた。地域住民の理解を得ることを含めて、国内の洋上風力発電の先駆けになる事業運営が望まれる。

図5 洋上風力発電の導入プロジェクト(2016年1月時点)。出典:資源エネルギー庁


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