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“行動型デマンドレスポンス”を実現、東京電力が提携する米ベンチャーの実...

“行動型デマンドレスポンス”を実現、東京電力が提携する米ベンチャーの実力 (陰山遼将,[スマートジャパン])

 2016年4月から始まる電力の小売全面自由化に向け、事業者間の顧客獲得競争が加速している。そして自由化が始まれば、小売事業者は顧客の獲得だけでなく、獲得した顧客に対していかにアプローチし、付加価値を提供して他社への乗り換えを防ぐかという戦略も重要になってくる。顧客から得たデータを解析し、自社のサービスを改善していくことも必要になってくるはずだ。

 東京ビッグサイトで開催された「新電力EXPO」(2015年1月27〜29日)では、さまざまな企業が小売電気事業者向けにこうした顧客管理やデータ解析に関連するソリューションをアピールしていた。

 その1社が米Opowerの日本法人であるオーパワージャパンだ。Opowerは2007年に米国で創業したベンチャー企業で、電力会社などが抱える顧客の電力使用量データを解析し、各世帯の省エネを支援するサービスなどを展開している。創業して10年にも満たないが、現在世界で約98社の電力・ガス事業者と提携しており、米国では電力会社上位20社のうち、約75%の企業が同社のサービスを利用しているという。

 既に日本にも進出している。2013年には東京電力と提携し、同時に日本法人であるオーパワージャパンを設立した。現在、東京電力が提供している「でんき家計簿」の一部のにOpowerのシステムが利用されている。ベンチャー企業ながらグローバルで高い採用実績を持つOpowerだが、そのサービスとは一体どんな内容なのか。同社のブースを取材した。

オーパワージャパンのブース

ユーザーからは見えないOpowerのビジネスモデル

 まずOpowerのビジネスモデルから説明する。Opowerは電力事業者が契約を結び、その事業者が抱える顧客の電力使用量や傾向を解析する。ポイントとなるのが解析だけでなく、各顧客に対して電力使用量や省エネのポイントなどについての通知も行うという点だ。

 そして、Opowerはこの通知を契約した電力事業者のサービスとして行うため、通知を受けるユーザー側からは「Opowerからの通知」というようには見えない。電力事業者の視点から見ると、顧客に対してOpowerのサービスを自社のサービスのように提供できるというわけだ。

 ここまでは他社も提供している電気使用量の“見える化”サービスと同様だ。しかし同社のサービスが米国の電力会社に広く採用された理由は、使用電力量などの“見える化”だけでなく、それに伴い顧客に対して省エネに向けた行動を起こさせる独自の通知サービスにあるという。

パーソナライズ化した通知が鍵に

 Opowerは独自のパターン分析アルゴリズムで解析した電力使用量や傾向を、各顧客に向けてパーソナライズした形式で通知を行う。具体的にはサードパティから提供を受けたデータや、公開されているオープンデータ(気象情報や機器の電力消費量)などを活用して、顧客ごとに「あなたの家庭は同じ家族構成の世帯の平均より電気料金が高い」「エアコンの温度を2度あげるとこれくらい電気料金が削減できる」といった具体的な省エネのアドバイスも同時に提供するのだ。

 こうした通知のタイミングや頻度も、顧客ごとに最適化しているという。通知の方法についてもWeb、紙の郵送、メールなどの複数のチャネルを用意しており、顧客ごとに最適な方法で通知していく(図2)。

図2 Opowerのサービスによる通知の例

 このように徹底してパーソナライズ化した通知を最適なタイミング・方法で届けることで、顧客の省エネ行動を促す“行動型デマンドレスポンス”を可能にするというのがOpowerのサービスの仕組みだ。米国ではOpowerのサービスを導入した電力会社は、平均して顧客の電力使用量を1.5〜3.0%程度削減することに成功した。そして、こうした顧客と密接な関係性を構築は、他の電力事業者に乗り換える顧客の数を抑えることにも貢献するという。

 日本と異なり、米国では多くの州で電力会社に対し毎年数%ごとの省エネが義務化されている。Opowerのサービスは、顧客の住宅に特殊な機器などを取り付けるなどのコストをかけることなく電力消費量の削減につながる。そこで多くの電力会社への採用が進んだという背景だ。

 また、オーパワージャパンのカントリーマネージャを務める公家尊裕氏は「通常こうした新しいサービスは“紙による通知”を扱わないことが多い。しかし紙で通知が欲しいというユーザーは常に一定層いる。Webやメールに加えて、紙の通知チャネルも用意していたことも米国の電力会社への採用を後押しした」と語る。

日本でのサービス展開は?

 Opowerのサービスは基本的にスマートメーターで取得した詳細な電力使用量データが必要になる。日本ではまだスマートメーターの設置が進められている段階だ。公家氏は「数年後、日本でも多くの家庭へスマートメーターが設置が進み、さらに日本全体で省エネに向けた規制がより強まっていった場合、大きな需要があると考えている」と述べる。

 現在オーパワージャパンでは住環境計画研究所と共同で、北陸電力エリアで2016年度末までをめどにOpowerのサービスを活用した省エネルギー効果の実証も進めている。

 また同氏は「電力事業者は今後、氏名、住所といった個人情報に加え、電力使用状況から類推できるその家庭の生活スタイルまでも含んだ、非常に価値の高いデータを手にすることになる。料金プランだけでは差別化が難しくなると見込まれる中で、こうしたデータを解析し、いかに活用して付加価値を提供していくかが各社の競争力の差になっていくと考えている」と述べる。

 オーパーワージャパンでは2015年に電通との提携も発表。電力使用状況の分析データを広告事業にも活用していく方針だという。「例えば電力事業者と家電量販店が提携し、われわれが顧客に通知するレポートの中に、その家庭に最適な省エネ家電の情報を掲載する。顧客ははそこから直接その商品を購入できるというようなビジネスモデルも考えられる」(同氏)。

 現在日本では東京電力との提携を発表している同社だが、今後は大手小売事業者を中心に他の小売事業者への提案も進めていくという。


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