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火力発電所の新設・廃止を加速、電気事業者36社がCO2削減へ協議会 (...

火力発電所の新設・廃止を加速、電気事業者36社がCO2削減へ協議会 (石田雅也,[スマートジャパン])

 2月8日に「電気事業低炭素社会協議会」(略称:ELCS、The Electric Power Council for a Low Carbon Society)が発足した(図1)。国内の発電電力量の大半を占める電力会社10社と電源開発(J-Power)のほか、東京ガスと大阪ガス、エネットをはじめ新電力の大手で構成する。電力業界が掲げる2020年度と2030年度のCO2(二酸化炭素)削減目標を達成することが目的だ。

図1 「電気事業低炭素社会協議会」の概要。出典:電気事業連合会ほか

 電力業界の目標は2030年度のCO2排出量を2013年度比で35%削減する。そのために電力1kWh(キロワット時)あたりの排出量を0.37kg-CO2(CO2換算キログラム)に抑制する必要がある。震災前の2010年度は0.35だったことから、原子力発電所を全面的に稼働させれば達成可能だが、もはや逆戻りはない(図2)。火力発電所の効率改善が急務になる。

図2 電気事業のCO2排出量・排出係数(画像をクリックすると拡大)。注釈は省略。出典:電気事業連合会

 協議会では各事業者がCO2削減に向けた取組計画を策定して、実施状況をPDCAで評価する仕組みを導入する(図3)。PDCA(Plan-Do-Check-Action)は計画をもとに事業をスピーディに実行しながら、結果を評価して次の計画に反映させる手法である。協議会は評価した結果を経済産業省と経団連(日本経済団体連合会)に報告したうえで公表する予定だ。事業者の実施状況が十分でない場合には取組計画の見直しを求める。

図3 電気事業低炭素社会協議会と会員事業者によるPDCAサイクル。出典:電気事業連合会ほか

 電力業界が新たに協議会を設立した背景には、CO2排出量の削減を主管する環境省からの強い要請があった。国の削減目標を正式に決定した2015年7月以降、環境省は石炭火力発電所の新設計画に対して「是認できない」との姿勢を貫いている。石炭火力は他の発電方式に比べてCO2排出量が多いためで、新設する前に電力業界全体でCO2削減に取り組む枠組みを設けるように再三にわたって要求してきた。

老朽化した火力発電所の廃止も急務

 環境省は協議会の設立を受けて、高効率の火力発電所に限定して新設計画を認める見通しだ。ただし火力発電の効率を引き上げるだけではCO2削減目標の達成はむずかしい。電力会社10社の2014年度のCO2排出係数を見ると、最低の中部電力が0.494(キログラム換算、調整後)、最高の沖縄電力は0.816に達する(図4)。2030年度の目標値0.37と大きな差がある。

図4 電力会社のCO2排出係数(2014年度)。単位:t-CO2/kWh(CO2換算トン/キロワット時)。再生可能エネルギーの買取量などを反映した「調整後」の排出係数が評価の対象になる。出典:環境省

 これからCO2排出量を目標値まで削減するために、電力会社の取組計画は国全体のエネルギーミックス(電源構成)に合わせた内容になる。2014年度の電源構成では火力が9割近くを占めていた(図5)。中でもCO2排出量の多い石炭が31%、石油も10%強ある。

図5 電源別の発電電力量。棒グラフの数値は構成比(画像をクリックすると拡大)。出典:電気事業連合会

 2030年度のエネルギーミックスでは石炭を26%程度、石油を3%程度まで削減する必要がある(図6)。LNG(液化天然ガス)も46%強から27%程度まで大幅に減らさなくてはならない。一方でCO2を排出しない原子力と再生可能エネルギーの比率を20%以上に増やして、ようやく目標を達成することができる。

図6 2030年度のCO2排出量とエネルギーミックスの目標(発電電力量ベース)。出典:資源エネルギー庁

 とはいえ原子力と再生可能エネルギーの比率をどこまで引き上げられるかは不確実な状況で、火力発電に伴うCO2削減の取り組みは前倒しで実施することが求められる。エネルギーミックスの観点から、効率の低い火力発電所を廃止することも不可欠である。

 このため経済産業省は火力発電を対象にしたベンチマーク制度を適用する方針だ。各事業者が運転する石炭・LNG・石油それぞれの火力発電設備の効率を実績値で評価して、基準に満たない場合には改善を要求する。ベンチマークの指標は2種類を検討中で、1つは石炭・LNG・石油の目標値に対する実績値、もう1つはエネルギーミックスをもとに計算した発電効率である(図7)。


図7 事業者別に火力発電の効率を評価する2つのベンチマーク指標。実績値(上)とエネルギーミックス(下)による目標値。出典:資源エネルギー庁 

 経済産業省は2016年度からベンチマーク制度を導入する。新たに発足した協議会のPDCAにも反映することになる。2030年度のCO2削減目標を達成するためには、火力発電所を数多く運転する電力会社10社とJ-Powerの取り組みが特に重要だ。協議会が1年後に公表する2016年度の評価結果に注目が集まる。


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