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日産「ノート」は1000km走れる“電気自動車”に、「アクア」との差は...

2016/11/7 IT media

日産「ノート」は1000km走れる“電気自動車”に、「アクア」との差は縮まるか (齊藤由希,[MONOist])



エンジンは発電のみ、駆動力はモーターでまかなうシステム「e-POWER(eパワー)」(クリックして拡大)

 日産自動車は2016年11月2日、コンパクトカー「ノート」を一部改良し、ハイブリッドモデルを追加すると発表した。エンジンは発電のみに使用し、駆動力をモーターのみでまかなうシステム「e-POWER(eパワー)」を搭載しており、「充電が不要な電気自動車」(日産自動車)と位置付ける。

 エンジンは燃費の良い回転数域のみを発電に使用するため、JC08モード燃費は37.2km/l(リットル)。運転の仕方にもよるが、1000km近く給油せずに走行できるという。eパワーモデルの税込み価格は177万円から。ノート全体の月販目標台数は1万台で、このうち6割がeパワーを選択すると見込んでいる。

ハイブリッドコンパクトカーの市場



一部改良した「ノート」の外観(クリックして拡大)

一部改良した「ノート」の外観(クリックして拡大)

一部改良した「ノート」の外観(クリックして拡大)

 ノートの2015年の販売台数は約9万8000台。コンパクトカー市場でのシェアは徐々に伸びており、2015年は15%だった。コンパクトカーはハイブリッド車の比率が37%まで高まっており、今後も需要が拡大していく見通し。ハイブリッドモデルの設定がある競合モデルとしては、ホンダ「フィット」が約12万台、トヨタ自動車「アクア」が約21万5000台を売り上げている。ノートのハイブリッドモデル投入も、こうした市場の要望に応えたものだ。

 ハイブリッドコンパクトカーとしては後発となることもあり、比較しても見劣りしない燃費と価格を実現している。フィット ハイブリッドは、前輪駆動モデルが169万円から、JC08モード燃費は36.4km/l。アクアは176万円から、JC08モード燃費は37.0km/lとなっている。

 eパワーは駆動用モーターのみで走行するため、モーターならではの走りや車内の静粛性を強みとし、競合モデルとの差別化を図る。

ノートなのに、スカイライン並みの走り

 eパワーは、電気自動車「リーフ」と同じ駆動用モーターで走行する。最大出力80kW/最大トルク254Nmを発揮し、発進時の加速や時速60kmからの再加速では排気量2lのターボエンジン(日産自動車のモデルでは「スカイライン」が該当)を凌ぐとしている。

 単純に高トルクを発揮するだけでなく、排気量2lターボエンジンと比較してG(加速)が安定し滑らかに走るという。また、従来のハイブリッドシステムと比較してエンジンが駆動する時間が半分まで短いため、静粛性も向上。クラスを超えた静粛性だとしている。



シフトレバーは電気自動車「リーフ」と同じ(左)。運転席の様子(右)(クリックして拡大)

シフトレバーは電気自動車「リーフ」と同じ(左)。運転席の様子(右)(クリックして拡大)




後部座席(左)と荷室(右)。家族構成やライフスタイルが変わっても乗りやすいクルマだという(クリックして拡大)

後部座席(左)と荷室(右)。家族構成やライフスタイルが変わっても乗りやすいクルマだという(クリックして拡大)

ノートと同じ1.2lのエンジン、役目は発電だけ

 eパワーのシステムは、ノートなどで搭載されてきた排気量1.2lの自然吸気3気筒エンジンと、リーフの駆動用モーターやインバーターを組み合わせている。駆動用リチウムイオンバッテリーと発電機は新規に開発したものだという。また、駆動用リチウムイオンバッテリーは、電気自動車ではなくハイブリッド車向けに開発したとしている。エンジン/インバーター/モーター/発電機は一体化してエンジンルームに収めた。駆動用リチウムイオンバッテリーは前席の下に配置している。

 従来のように駆動用モーターとエンジンの駆動力を併用するハイブリッドシステムでは、エンジン駆動とモーター走行の切り替えだけでもエネルギーを失う。また、エンジンで走る際の振動が電気自動車らしさを損なうため、エンジンを発電のみに使うeパワーにこだわった。



ハイブリッド車と電気自動車、eパワーのシステム構成の違い(クリックして拡大) 出典:日産自動車

なぜ1.2lのエンジン? エンジンはいつかかる?

 エンジンを発電機として使う電気自動車には、BMW「i3」のレンジエクステンダーモデルがある。i3は直列2気筒で排気量647ccのエンジンをレンジエクステンダーとして搭載している。このエンジンは最高出力28kW/最大トルク56Nmで、121km分の走行距離を稼ぐ。燃料タンクは9lだ。これに対し、ノートの排気量1.2lの3気筒エンジンは最高出力58kW/最大トルク103Nm。燃料タンクは41lとなっている。

 日産自動車が排気量1.2lのエンジンを発電用に選んだのは、小さすぎるエンジンでは発電のために回転数を上げる必要があり、大排気量ではエンジン自体の燃費が悪化するためだという。「街中でも静かに走行でき、2200〜2500rpmの最も燃費の良い範囲を発電に使えるのが、排気量1.2lのエンジンだった」(日産自動車の説明員)。エンジンはノートからそのまま流用するのではなく、アトキンソンサイクル化や燃費の改善など発電用途向けにチューニングした。

 エンジンが始動するのは、登り坂などで加速が必要な場合や、渋滞時などにエアコンを使用するなどしてバッテリーの残量が減少した場合、暖房のために水温を上昇させる場合などだ。暖房を使用しても、水温が上昇した後はエンジンがオフになる。

リーフと同じ駆動用モーター、どうやってノートのエンジンルームに収めた?



エンジンルーム内に駆動用モーターを収めるレイアウトは苦労したポイントの1つ(クリックして拡大)

 エンジンルーム内のレイアウトは「とても苦労した」(日産自動車の説明員)。既にパワートレーンが詰まった中にリーフの駆動用モーターを新たに追加するためだ。解決策としては、12Vバッテリーを荷室の床下に移動し、駆動用モーターのケースを設計し直した。部品の小型化などはあまり行っていない。「後はギチギチに部品を詰めていく。衝突時にパワートレーンが移動することも踏まえ、安全性も確保した」(同社の説明員)。

 eパワーの他車種への展開は現在議論中だという。ただ「日産自動車の最も小さいプラットフォームで搭載できたので、上の車格であっても搭載は難しくない」(同社の説明員)と見ている。


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