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日本初の波力発電所が完成、海中で波を受けて陸上に送電 (石田雅也,[ス...

日本初の波力発電所が完成、海中で波を受けて陸上に送電 (石田雅也,[スマートジャパン])

 日本初の波力発電所が完成した場所は、岩手県の久慈市(くじし)にある「久慈港」の一角にある(図1)。この一帯は東日本大震災で津波の被害を受けた地域で、復興プロジェクトの1つとして波力発電の実証に取り組んでいる。



図1 「久慈港」の全景。港の南側(写真では右下)に玉の脇漁港がある。出典:岩手県県土整備部

 久慈港の中にある「玉の脇漁港」の防波堤を利用して、「久慈波力発電所」が10月24日に完成した(図2)。プロジェクトの中心メンバーである東京大学・生産技術研究所が開発した波力発電装置を備えている。



図2 防波堤の外側に完成した「久慈波力発電所」(画像をクリックすると拡大)。出典:久慈市役所

 発電所は海底に設置する基礎部分の上に、建屋を搭載する構造になっている。建屋の中に発電機があって、その下に大きな波受け板(ラダー)がぶら下がる(図3)。全体の大きさは横幅が7メートルで、高さと奥行きは12メートルある。80トンの重さで海底の岩盤に固定する仕組みだ。



図3 波力発電装置の設置イメージ。黄色が波受け板、緑色が発電機。出典:東京大学

 波受け板の大きさは高さが2メートルで、横幅が4メートルある。防波堤に水平に設置した波受け板は海からの波を受けて振り子状に回転し、さらに防波堤から戻ってくる波も受けて回転力を高める。回転軸が発電機とつながっていて電力を生み出す(図4)。



図4 波力発電装置の内部構成。出典:東京大学

 発電能力は43kW(キロワット)ある。波の強さは季節や天候によって変動するため、平均で10kW程度の出力を想定している。年間の発電量は約9万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(3600kWh)に換算すると25世帯分に相当する。

発電コストの低減が最大の課題に

 久慈港の波力発電の実証プロジェクトは2012〜2016年度の5年間で実施する計画だ。2013年度に玉の脇漁港の周辺で波の状況を観測した後に、発電装置の製造に着手した。久慈市内の工場で2016年1月に発電装置が完成して、9月上旬にクレーン船で玉の脇漁港まで曳航して設置工事に入った。9月下旬には試験運転を開始する一方、東北電力の配電線に接続する工事も進めた(図5)



図5 設置工事中の様子。出典:東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト

 発電所は防波堤から通路でつながっていて、そこを通って陸上の配電線まで接続する。防波堤の横には電力を変換するパワーコンディショナーや電圧を調整するトランスが設置されている。発電した直流の電力を交流に変換して配電線に供給する流れだ(図6)。



図6 波力発電装置の設置場所と配電設備。出典:東京大学

 プロジェクトチームは2017年3月まで実証運転を続けて、実際の発電量や装置の制御方法を検証する。プロジェクトが完了した後も、東京大学を中心に発電機メーカーなどが参画して実証運転の継続と装置の改良に取り組む予定だ。

 最大の課題は発電コストを低減することにある。現状では1kWhの電力を作るコストが60円程度と高く、発電装置の軽量化などを通じてコストを引き下げていく必要がある。国の目標は波力発電を含む海洋エネルギーのコストを2020年代に20円/kWh以下に抑えることである。その目標に向けた第一歩が岩手県の漁港から始まった。


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