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急浮上した原子力事業の分離案、東京電力の改革の道は険しく (石田雅也,...

急浮上した原子力事業の分離案、東京電力の改革の道は険しく (石田雅也,[スマートジャパン])

 東京電力の改革に向けた動きが目まぐるしくなってきた。経済産業省は「東京電力改革・1F問題委員会」(1F:福島第一原子力発電所)の議論を経て年末までに改革案の骨子をとりまとめる予定だ。10月25日に開催した第2回の委員会では4通りのシナリオを提示して、原子力事業を別会社に分離する案を盛り込んだ。

 東京電力が抱える最大の課題は、福島第一原子力発電所の事故に伴う賠償・廃炉・除染の費用を長期にわたって確保することにある。総額で11兆円を見込んでいた費用は上振れすることが確実で、国と東京電力には抜本的な改革を早急に進めることが求められている(図1)。



図1 東京電力が抱える課題と対応策。出典:経済産業省

 事業の再編を含む「非連続の経営改革」を断行しながら、並行して「柏崎刈羽原子力発電所」の再稼働を推進していくことが基本方針になっている。この2つの課題に対応する方策として浮上した案が原子力事業の分社化である。現在は持株会社の東京電力ホールディングスの中にある原子力関連の部門を独立の事業会社に分離する構想だ(図2)。



図2 東京電力グループの現在の体制。出典:東京電力ホールディングス

 すでに東京電力は2020年の発送電分離を先取りして、火力発電・送配電・小売の3部門を事業会社に分割している。それぞれの事業会社がいち早く他社と連携を進めて収益を拡大する狙いだ。火力発電事業では中部電力と合弁で「JERA」を設立し、小売事業ではソフトバンクと提携して電力と携帯電話のセット販売に乗り出している。

 今後は送配電事業でも他の地域の電力会社と連携を図る方針だが、同様に原子力事業も別会社に分離して他社と連携を進めやすくする(図3)。原子力事業の専門会社として人材を維持しながら、再稼働による収益の拡大と将来に向けた廃炉ビジネスの可能性を追求する目的がある。



図3 東京電力の原子力事業を別会社化する案(画像をクリックすると各部門の課題も表示)。1F:福島第一原子力発電所。出典:経済産業省

廃炉費用が年間に数千億円も増加

 経済産業省は福島第一原子力発電所の事故対応費用を捻出するためのシナリオを4通り挙げている。国の支配下に置く「現状維持」や「長期公的管理」のほかに、会社更生法などによる「法的整理」も選択肢に含まれている。その中で自立再建を目指す「東電改革」を最優先に脱・国有化を図ることが現時点の方向性だ(図4)。



図4 「東電改革」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 とはいえ改革の道筋は険しい。現在のところ賠償・廃炉・除染にかかる費用は年間に約4000億円で、毎年度に稼ぐ利益でカバーできる水準にある。ところが今後は事故で原子炉から溶け落ちた燃料(デブリ)の取り出しが必要になり、年間に数千億円レベルの廃炉費用を上積みしなくてはならない(図5)。利益水準を倍増させる必要があるが、見通しは立っていない。



図5 事故に伴う費用を捻出する4通りのシナリオの流れ(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 収益の改善につながる原子力発電所の再稼働も当面はむずかしい。東京電力の原子力発電所で再稼働の可能性があるのは「福島第二原子力発電所」と「柏崎刈羽原子力発電所」の2カ所だ(図6)。このうち柏崎刈羽の6号機と7号機は新規制基準の適合性審査の途上にあるが、立地自治体の新潟県が再稼働に反対する姿勢を明確に示している。



図6 原子力発電所の状況(画像をクリックすると拡大)。BWR:沸騰水型原子炉、ABWR:改良型BWR、PWR:加圧水型原子炉。出典:資源エネルギー庁

 一方では関西電力をはじめ加圧水型の原子力発電所を保有する電力会社4社(北海道・関西・四国・九州)が10月19日に技術協力の協定を締結して、安全性の向上に共同で取り組んでいく計画を明らかにした。将来は廃炉に関しても連携する可能性がある。

 もはや1社で原子力事業を長期に運営することは困難になってきた。東京電力の原子力事業を分離するのは必然とも言えるが、連携できる可能性があるのは同じ沸騰水型の原子炉を採用している東北電力・北陸電力・日本原子力発電の3社に限られる。想定するシナリオどおりに改革を進めるのは至難の業である。


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