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急がれる太陽光発電と風力発電の安全対策 (石田雅也,[スマートジャパン...

急がれる太陽光発電と風力発電の安全対策 (石田雅也,[スマートジャパン])

 2015年9月に北関東で発生した鬼怒川(きぬがわ)の決壊では、川の近くにあった太陽光発電設備の損壊によって被害が拡大したことは記憶に新しい。その直前の8月には九州を襲った台風15号の影響で、メガソーラーの太陽光パネルが飛散して近隣の住宅を損壊する被害が発生している(図1)。

図1 太陽光発電設備の損壊事故の例。九州の台風被害(左)、鬼怒川の決壊被害(右)。出典:資源エネルギー庁

 経済産業省が九州の台風被害の状況を調査したところ、管内に約3000カ所ある事業用の太陽光発電設備のうち81件が被害を受けていた。その中の約4割で太陽光パネルの脱落・飛散が発生している。特に被害が多かったのは発電能力が500〜2000kW(キロワット)の中規模の太陽光発電設備で、設計基準を満たしていないケースも少なくなかった。

 一方の風力発電設備では2013年に風車の落下事故が4カ所で発生したほか、直近では2015年12月に福井県の「あわら北潟発電所」で風車の落下事故が発生している。稼働中の9基の風車のうち1基が落雷を受けた後に、3枚の翼の2枚が折れ曲がり、1枚は地上に落下した(図2)。

図2 「あわら北潟発電所」の風車落下事故。出典:ジェイウインド

 この風車の製造元は大手メーカーの日本製鋼所である。同社の製品は2013年4月に落下事故を起こした三重県の「ウインドパーク笠取」でも使われていた(図3)。事故の原因は風車の機械部品の材質に問題があったことによる。摩耗した機械部品が風車を制御できなくなり、強風を受けて異常な回転速度を生じた。部品レベルの定期検査を実施していれば事故を防げた可能性がある。

図3 「ウインドパーク笠取」の風車落下事故。出典:シーテック

 京都府の「太鼓山風力発電所」で2013年3月に発生した風車の落下事故も甚大だった。6基の風車のうち5基に亀裂が入り、その中の1基は発電機を含めて丸ごと地上に落下してしまった(図4)。製造元はオランダのラガウェイ社で、強風を受けた風車が金属疲労によって破損したものと考えられている。

図4 「太鼓山風力発電所」の風車落下事故。出典:京都府文化環境部

太陽光発電の保安規制を見直し

 太陽光発電と風力発電の事故が頻発したことを受けて、ようやく政府も安全対策の強化に乗り出す。太陽光発電に対しては、電気事業法で定めた保安規制を見直す方針だ。現在は発電能力が2000kW未満の設備には工事計画の届出が不要だが、この条件を500kW未満に変更して届出の対象を拡大する可能性がある(図5)。さらに技術基準の妥当性も再検証する。

図5 太陽光発電設備の認定・導入状況と保安規制(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 風力発電には太陽光発電よりも厳しい検査制度を適用する見通しだ。現在の電気事業法では火力発電設備を対象に定期安全管理検査制度を義務づけて、3〜4年ごとに国か民間の審査機関による定期検査を実施している(図6)。この検査制度を風力発電にも拡大する。開始時期は2017年度を予定している。

図6 火力発電設備を対象にした定期安全管理検査制度。出典:資源エネルギー庁

 定期安全管理検査制度の実施に向けて、風力発電事業者や風車メーカーなどで構成する日本風力発電協会は定期点検指針の試行版を策定した。風力発電設備の部位ごとに点検の周期と項目を決めて、すでに一部の発電所で実施中だ(図7)。

図7 風力発電設備の定期点検指針(試行版)の概要。出典:資源エネルギー庁

 試行版の実施状況を参考にしながら、政府は検査制度の対象に含める風力発電設備の規模などを2016年度の上期中に確定させて、2017年度からの実施に間に合わせる。風力発電に対しては国が直接検査を実施したことはなく、審査機関の体制整備も課題になる。

 一方では固定価格買取制度の見直しも進めて、天候の影響を受けやすい太陽光発電と風力発電の買取価格を長期的に引き下げていく。買取価格の低下に加えて安全対策の強化を求められると、発電事業者にとっては収益性が厳しくなる。とはいえ環境負荷の低いことが再生可能エネルギーの最大の利点であり、事故を防止するための安全対策は欠かせない要件になる。


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