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巨大な太陽光発電所が相次いで着工、被災した農地をエネルギー供給基地に ...

巨大な太陽光発電所が相次いで着工、被災した農地をエネルギー供給基地に (石田雅也,[スマートジャパン])



図1 福島県の避難指示区域(2016年10月28日時点)。出典:福島県庁

 福島県の太平洋沿岸にある富岡町では、現在も約1万5000人の町民が県内・県外で避難生活を送っている。福島第一原子力発電所に近い北東部は放射線量が多いために「帰還困難区域」に指定されているが、そのほかの場所は「居住制限区域」や「避難指示解除準備区域」になって復興と帰還に向けた取り組みが進んできた(図1)。

 町の北西部には農地が広がっている。農業の再開と再生可能エネルギーの導入を柱に地域産業の活性化を目指す方針だ(図2)。農地のうち土地の汚染が深刻な場所や以前から放棄地になっていた場所を太陽光発電の事業用地に転換して、農業に代わるエネルギー産業を創出していく。



図2 富岡町の土地利用方針(画像をクリックすると拡大)。出典:富岡町産業振興課

 2015年11月に富岡町が策定した太陽光発電事業計画では、3カ所に発電所の建設を決めた(図3)。いずれも面積が40万平方メートル程度の広大な農地で、発電能力が20〜30MW(メガワット)級の大規模なメガソーラーを予定している。このうち2カ所で建設工事が始まった。



図3 富岡町の農地活用による太陽光発電事業計画(2015年11月)。FIT32:固定価格買取制度の買取価格32円。出典:富岡町産業振興課

 町内の大石原・下千里地区では「富岡復興メガソーラー・SAKURA」が2016年7月に着工した。40万平方メートルの用地に30MWのメガソーラーを建設する(図4)。富岡町と福島発電、JR東日本エネルギー開発が共同で設立した「福島復興エナジー」が発電事業者になる。「SAKURA」は富岡町が誇る桜になぞらえて、地域復興のシンボルにする願いが込められている。



図4 「富岡復興メガソーラー・SAKURA」の完成イメージ。出典:富岡町、福島発電、JR東日本エネルギー開発

 2017年12月に運転を開始する予定で、年間の発電量は3300万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して9200世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に10億円を超える収入を得られる見込みだ。収入の一部は「福島県再生可能エネルギー復興推進協議会」を通じて地域の復興に生かす。土地の地権者である町民には地代が入る。

県内のエネルギー自給率を2018年に30%へ

 続いて2016年9月には杉内地区でもメガソーラーの建設が始まった。発電事業者は特別目的会社の「富岡杉内ソーラー」である。環境省の「地域低炭素投資促進ファンド」を運営するグリーンファイナンス推進機構のほか、シャープや芙蓉総合リースなどが出資した(図5)。



図5 「富岡杉内ソーラー」の事業スキーム。SPC:特別目的会社。出典:グリーンファイナンス推進機構

 建設するメガソーラーの発電能力は25MWで、年間の発電量は2500万kWhを見込んでいる。一般家庭の6900世帯分に相当する電力になる。運転開始は2018年3月の予定だ。発電した電力は固定価格買取制度で売電して年間に約8億円の収入を得られる。この売電収入の一部も福島県再生可能エネルギー復興推進協議会に寄付する。

 3カ所目の高津戸地区のメガソーラーは市民の出資を得て建設する計画で、「福島富岡復興グリーンファンド」の募集を2016年10月末まで実施した(図6)。発電事業者は地域の住民が設立した「富岡復興ソーラー」が出資する特別目的会社の「さくらソーラー」である。発電能力は30MWを予定していて、近く工事に入る見通しだ。



図6 「福島富岡復興グリーンファンド」の仕組み。出典:自然エネルギー市民ファンド

 福島県内では再生可能エネルギーの導入を加速させるプロジェクトが数多く進んでいる。震災の被害が大きかった太平洋沿岸に新たな産業を創出する「イノベーション・コースト構想」では、太陽光発電をはじめ風力やバイオマス、水素エネルギーの導入プロジェクトを推進中だ(図7)。富岡町を中心とする一帯は重点地域の1つになっている。



図7 「イノベーション・コースト構想」のエネルギー関連プロジェクト(画像をクリックすると拡大)。青色の地域は「避難地域・再生可能エネルギー復興支援プロジェクト」の対象。出典:福島県企画調整部

 2013年度に開始した「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」では、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を掲げた。2040年に県内のエネルギー需要を100%再生可能エネルギーで供給することが目標だ(図8)。当面は震災前に20%程度だった比率を2018年に30%まで引き上げる。






図8 「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」の導入目標(上、需要と導入量は原油換算)、アクションプランによる導入量(下)。kl:キロリットル、MW:メガワット。出典:福島県企画調整部

 福島県の再生可能エネルギーで中核になるのは太陽光発電である。2018年には原子力発電所1基分に匹敵する836MW(83万6000キロワット)の電力を太陽光発電で生み出せる見通しだ。富岡町に新たに生まれるメガソーラーによって目標の達成に近づく。


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