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宇宙からの太陽光発電へ前進、レーザーによる電力伝送実験で好結果 (石田...

宇宙からの太陽光発電へ前進、レーザーによる電力伝送実験で好結果 (石田雅也,[スマートジャパン])

 「宇宙太陽光発電システム」(SPSS:Space Solar Power Systems)は宇宙に浮かぶ太陽光発電所である。人工衛星に搭載した装置から太陽光エネルギーを地上に伝送して、電力に変換して利用できる発電方法だ(図1)。地上の太陽光発電のように天候の影響を受けにくく、必要に応じて地球上のあらゆる場所まで電力を届けることが可能になる。

 未来の再生可能エネルギーとして大きな期待がかかるが、課題も多く残っている。その1つが宇宙から地上まで太陽光エネルギーを伝送する技術である。現在のところ電波の中で波長が最も短いマイクロ波や、さらに波長の短いレーザーを使って伝送する方法が有力だ(図2)。JAXA(宇宙航空研究開発機構)は小規模なシステムを構築しやすいレーザーを利用した伝送方法の技術開発に取り組んでいる。

 レーザーを使って太陽光エネルギーを伝送するうえで、最大の課題は宇宙から地上の受光装置まで位置をずらさずに正確に届けることにある。ところが大気中には乱れがあるため、その影響で地上に届くまでにレーザービームの方向がずれてしまう。受光装置の範囲からはずれてしまうと、宇宙から送った太陽光エネルギーを地上で受け取ることができなくなる。

 求められる精度は高度3万6000km(キロメートル)の位置から、地上の3.6m(メートル)以内に到達させることだ。これは4km離れた場所から富士山の頂上に置いたわずか0.4mm(ミリメートル)の針穴を通すことに匹敵する(図3)。角度で表すと100万分の5.7度(0.1μRAD=マイクロラジアン)である。

 JAXAは10倍の1μRADを目指して、2016年5月中旬から約1カ月かけて電力伝送の実証実験を地上で繰り返した。実験の場所は茨城県にある日立製作所の事業所の構内で、高さが213メートルあるエレベータの研究タワーを利用した。タワーの屋上に送光ユニット、地上に受光ユニットを設置して、その間を上下方向にレーザーを照射する(図4)。

0.5mmのずれで74.7Wの電力に変換

 タワーの屋上から地上まで200m余りの距離だが、地表面の近くは熱の影響で大気の乱れが大きい(図5)。その条件の中で、富士山頂の4mmの針穴を通すのと同じ精度でレーザーを伝送することが目標になる。JAXAが開発したレーザービームの方向制御の仕組みは、回転ミラーを使ってずれを補正する方法である。

 宇宙から地上の特定の場所まで正確にレーザーを到達させるために、地上から誘導用の「パイロットレーザー」を宇宙の人工衛星に送り、その方向に対して高出力のレーザーを照射して地上まで伝送する。この間に大気の乱れ(ゆらぎ)によってレーザービームの方向がずれるが、人工衛星に装着した回転ミラーで補正する仕組みだ(図6)。

 JAXAの実験システムでは、パイロット用の小出力のレーザーだけを透過するミラーを使った(図7)。小出力のレーザービームの乱れを計測してミラーを制御する。伝送用の高出力のレーザーは方向を補正した状態のミラーで反射して、光を電力に変換する装置へ正確に送ることができる。

 この実験を通じてレーザービームの方向制御の正確さと、伝送できる電力の大きさを測定した。ビーム方向制御の精度は目標の1μRADよりも少し大きい約2.5μRADに収めることができた(図8)。これは200mのタワーの下で0.5mmのずれに相当する。今後さらに精度を向上させていく。


 一方の電力伝送は出力340W(ワット)のレーザーをタワーの屋上から地上の光電変換装置まで送り、変換後に60Wの出力を得られることを目標に設定した。実験では最大で74.7Wまで出力を高めることができて、高出力のレーザーによる送電が可能なことを実証した。

 JAXAは実証実験の結果から、レーザービームの方向を高精度に制御して宇宙から地上まで伝送できる技術の実現にめどをつけた。電力伝送の効率は22%(74.7W/340W)だったが、今後は伝送システム内の光の損失低減などを図り、35%まで引き上げることを目指す。

 実際に小型の衛星を使った宇宙太陽光発電システムの実証は2020年代に開始する計画で、2030年代にはMW(メガワット)級の発電システムを実用化することが国の目標になっている。伝送技術が着実に進歩して実現に近づきつつある。


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