ものづくりニュース by aperza

地産地消の自立型水素システム、CO2フリー化の敵は太陽電池の置き場所 ...

地産地消の自立型水素システム、CO2フリー化の敵は太陽電池の置き場所 (三島一孝,[スマートジャパン])

 東芝は2016年6月9〜10日に神奈川県川崎市で毎年恒例の「第25回東芝グループ環境展」を開催。その中で、自立型水素エネルギー供給システムとして「H2One」への取り組みを紹介した。

 H2Oneは、太陽光発電設備、蓄電池、水素を製造する水電気分解装置、水素貯蔵タンク、燃料電池、水素エネルギーマネジメントシステム(水素EMS)を組み合わせ、1つのパッケージとした自立型のエネルギ―供給システムである(図1)。こうした水素関連設備はさまざまな機器や設備を独自で設計して組み立てるケースが多いが、1つのパッケージとしてコンテナでも運べる手軽さを実現したことが特徴である。



図1:川崎マリエンに設置された東芝の自立型水素エネルギー供給システム「H2One」

 水素を製造するための水の電気分解に必要な電力を再生可能エネルギーで賄い、発生した水素をタンクに貯蔵し燃料電池で発電することで、電力と温水を生み出すことができる。そのため、電力と水を確保さえできれば、二酸化炭素の発生を抑えた地産地消の電力活用が可能となる。水については通常の水道水を貯水タンクにためて利用。燃料電池により発生する温水については温水タンクを用意する。水の電気分解時に発生する酸素については空気中に放出するという(図2)。



図2:H2Oneの構成。CO2の排出を抑えた水素エネルギー提供が可能だ※出典:東芝

ハウステンボスや大黒ふ頭などへ導入

 東芝では2015年4月に水素社会に向けた取り組み強化を発表(関連記事)しており、これにより「H2One」の本格展開を発表した。発売から約1年がたつが、既に神奈川県川崎市の川崎マリエン(関連記事)や長崎県佐世保市のハウステンボス(関連記事)、横浜市の大黒ふ頭(関連記事)などに販売され、稼働を開始しているという。さらに、JR東日本が行うエコな駅「エコステ」プロジェクトにも参加し川崎市の南武線武蔵溝ノ口駅へ2017年にH2Oneを設置することも決まっているという(関連記事)(図3)。



図3 H2Oneの導入事例 出典:東芝

「自給自足は意外に難しい」

 H2One発売後の手応えについて東芝 次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム 参事の嶋田雄二郎氏は「発表後はテレビCMなどを行ったこともあり多くの引き合いがある状況。365日24時間稼働ができる点や化学反応を利用しているため静音性がある点などが評価を受けている。環境対策の面だけでなく、BCP(事業継続計画)などの面での評価も高い」と述べている。

 防災やBCPの面では、再生可能エネルギーでの発電を生かした「完全自立型」への期待感もあるが、実際には難しいと嶋田氏は述べる。

 「電気分解に必要な十分な電力を得るためには、H2Oneの屋根に設置する太陽光発電設備だけでは不十分。そのため、別の敷地の太陽光発電設備などを用意しなければならないが、スペース面などからなかなか条件で折り合わないケースがある」(図4)



図4 川崎マリエンのH2One。自給自足を実現するためにH2One上の太陽光パネルの他に、バーベキュー場の屋根に太陽光パネルを設置している(赤丸)

 今後に向けては太陽電池以外の再生可能エネルギーとの組み合わせなども推進。H2Oneではないが、北海道釧路で小水力発電と水素による蓄電を組み合わせた実証を行っている他、京浜臨海部では風力発電と水素蓄電を組み合わせた実証なども推進。利用可能な再生可能エネルギーの幅を広げていく方針だ。

 水素社会の実現に向けて嶋田氏は「将来的には水素供給体制をどう作るかということが大きな課題となる。工業用水素は既にさまざまな形で流通しているので、決してできない話ではない。水から作り出す電気分解装置の低廉化などさまざまなアプローチが取れると思うが、最適解を生み出していくことが必要だ」と述べている。


スマートジャパン」は、日本各地の企業・自治体にとって喫緊の課題である電力の有効活用と安定確保に向け、節電・蓄電・発電のための製品検討や導入に役立つ情報を提供します。企業や自治体の総務部、システム部、店舗運営者、小規模工場経営者などの方々に向けて、電力管理や省電力化を実現する製品情報、導入事例、関連ニュースをお届けするほか、製品カタログや利用ガイドなども掲載していく予定です。 http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/