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原子力発電所の再稼働で需給見通し修正、いつまで続ける過大な需要予測 (...

原子力発電所の再稼働で需給見通し修正、いつまで続ける過大な需要予測 (石田雅也,[スマートジャパン])

 経済産業省と電力会社が連携して原子力発電所を再稼働させるシナリオは単純にできている。電力の需給見通しを現実以上に厳しい数値で出して国民の不安をあおる一方、電気料金を値上げして家庭や企業のコストを増大させる。原子力発電所が再稼働すれば、需給状況を改善できるうえに、電気料金も引き下げられてメリットが大きいことを強調する。関西電力による原子力発電所の再稼働は、まさにこのシナリオで進んでいる(図1)。

図1 再稼働した「高浜発電所」の外観と設備構成。出典:関西電力

 以前から妥当性が疑われる夏と冬の需給見通しだが、経済産業省は2月5日に今冬の需給見通しを修正した。関西電力の高浜発電所3号機が前日に再稼働して、供給力が増加したことを理由に挙げている。当初は関西の予備率(需要に対する供給力の余裕)が2月に3.3%まで下がると予測していたが、6.9%に引き上げた(図2)。同様に原子力発電所が再稼働した九州の予備率も上方修正した(当初の予測は2月に5.8%、3月に4.7%)。

図2 高浜発電所の再稼働に伴う2月の需給見通し修正(画像をクリックすると9地域すべてを表示)。出典:資源エネルギー庁

 予備率が3%を切ると、停電の可能性が生じる危険な状況になる。これまで関西電力は九州電力とともに毎年の夏と冬の予備率を3%で出し続けてきた。しかし実際に3%まで下がったことは一度もなく、2015年の夏には常に10%以上を維持した。今冬も1月25日(月)に予備率が8%になったのが最低で、当初予測した1月の予備率4.3%を大きく上回っている。

 それも当然で、もともと前年の実績以上に需要を大きく見積もり、需給状況を実態よりも厳しく予測しているからだ。にもかかわらず経済産業省と電力会社は非現実的な需給見通しを出し続けてきた。原子力発電所を再稼働させるための露骨なPR活動である。新聞社をはじめ一部のメディアも「綱渡りの電力需給が続く」などと喧伝して、実態と異なる報道を繰り返した。

再稼働で4月1日から電気料金を値下げへ

 こうして官と民の連携で国民を不安にさせながら、原子力発電所の再稼働にこぎつけたわけだ。さらに再稼働のシナリオは加速していく。3月上旬に高浜発電所の4号機が再稼働することを織り込んで、3月の需給見通しを3.1%から14.4%へ大幅に引き上げた(図3)。2月5日の時点では4号機を再稼働させる日程が確定していないにもかかわらず、経済産業省と関西電力は再稼働を前提に需給見通しを上方修正している。

図3 高浜発電所の再稼働に伴う3月の需給見通し修正(画像をクリックすると9地域すべてを表示)。出典:資源エネルギー庁

 シナリオの続きは電気料金の引き下げである。関西電力は原子力発電所を再稼働できれば、2016年度の早い時期に電気料金を値下げすると表明している。実際には小売の全面自由化が始まる4月1日から電気料金の単価を引き下げる可能性が大きい。そのために高浜発電所3・4号機の再稼働を3月までに完了させる必要があったと考えられる。

 すでに大阪ガスをはじめ多くの事業者が1月初めから関西電力の管内で顧客の獲得に乗り出している。1月29日の時点で21万件の契約変更の申し込みがあった。関西電力の管内には新たに自由化の対象になる家庭や商店の需要家が約1300万件ある。早くも全体の2%近い需要家が契約変更を申し込んだことになる。この状況が4月以降も続けば、関西電力の収益に加わるダメージは大きい。

 結局のところ原子力発電所を再稼働させるのは、もはや電力の需給状況が厳しいからではなくて、電力会社の経営状況が厳しいからにほかならない。そろそろ本当のことを経済産業省も電力会社も国民に伝えて、適正な理解を求めるべきである。現状のままでは原子力に対する国民の不信は高まるばかりだ。正確な状況をわかりやすく説明して、それでも国民が再稼働に反対するならば、日本の電力市場に不要なものとみなすのが妥当だろう。


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