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人口1万1000人の町を水素タウンに、エネルギーを100%自給自足へ ...

人口1万1000人の町を水素タウンに、エネルギーを100%自給自足へ (石田雅也,[スマートジャパン])

 岐阜県の南部にある八百津町(やおつちょう)は山と平野のあいだに広がる典型的な中山間地で、農業と林業を中心に発展してきた。近年は人口減少に悩む中で、新たに「中山間地型水素社会の構築による100%エネルギー自給自足のまち 八百津プロジェクト」を推進中だ(図1)。

図1 「八百津プロジェクト」の実施イメージ(画像をクリックすると拡大)。HEMS/EMS:エネルギー管理システム。出典:岐阜県商工労働部

 このプロジェクトは八百津町と岐阜県に加えて、岐阜大学と地元の民間企業も加わって産学官連携で取り組んでいる。町内の3つの地区を対象に、再生可能エネルギーで電力と熱を供給するのと合わせて水素の製造にも着手する計画だ。八百津産のエネルギーだけで町内の電力と熱を100%自給自足できる体制を目指す。

 3つのモデル地区の1つは「人道の丘」で、ここには第二次世界大戦中に約6000人のユダヤ人の命を救ったことで知られる外交官・杉原千畝氏の記念館がある(図2)。観光の名所でもある場所に太陽光発電と木質バイオマスボイラー、さらに水素で電力と熱を供給する燃料電池を導入する。周辺の住宅や店舗にも電力と熱を供給しながら、観光と再生可能エネルギーの相乗効果を高めていく狙いだ。

図2 「杉原千畝記念館」の外観。出典:八百津町観光協会

 八百津プロジェクトに参加する民間企業の1社は、隣接する愛知県に本社があるブラザー工業である。事務機メーカーの同社は新規事業として燃料電池システムを開発した。水素を貯蔵できる特殊な金属を採用して、安全な状態で長期に水素を保管して発電できる特徴がある(図3)。現在はプロジェクトの参加企業と共同で、熱も供給できる燃料電池システムを開発中だ。

図3 水素吸蔵合金を採用した燃料電池システム。発電ユニット(左)、燃料ユニット(右)

 八百津プロジェクトでは2016年度中に事業計画を策定したうえで、2017年度から燃料電池と合わせて木質バイオマスボイラーや水素製造装置を導入していく。すでに総務省から「分散型エネルギーインフラプロジェクト・マスタープラン策定事業」の事業費として2400万円の交付を受けることが決まっている。

移動式の水素ステーションが開設

 八百津プロジェクトが目指す水素タウンは、地域の再生可能エネルギーで作った電力からCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造して、町内の住宅や公共施設・農業施設に効率よく電力と熱を供給する。林業関連の事業者が集まる久田見(くたみ)地区に水素製造装置を導入する予定で、太陽光発電と木質バイオマス発電の電力から水素を製造する計画だ(図4)。

図4 八百津町の再生可能エネルギーによる水素供給イメージ。出典:岐阜県商工労働部

 製造した水素は純水素型の燃料電池を使って地区内に電力と熱を供給する一方、町の中心部に導入する燃料電池にも供給する。地域の再生可能エネルギーで作った電力を地産地消しながら、余剰分を水素に転換・貯蔵して有効に活用する体制だ。この仕組みで地域のエネルギーを100%自給自足できる水素タウンを構築していく。

 八百津町には2016年3月に移動式の水素ステーションが営業を開始している(図5)。プロジェクトにも参画する県内企業の清流パワーエナジーが開設した岐阜県で初めての水素ステーションだ。観光を軸に近隣地域から燃料電池自動車を呼び込んで、水素タウンの発展につなげる。


図5 八百津町を拠点にする移動式の水素ステーション。出典:サンコウグループ


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