NEC米沢工場の潜入ムービー!RFIDを活用した最新IoT工場

NEC米沢工場の潜入ムービー!RFIDを活用した最新IoT工場

NECのパソコン生産の国内拠点であるNEC米沢工場は、グローバルSCMのマザーファクトリーとしてRFIDやIoT技術を活用した最先端のものづくりが行われています。ここでは製造現場と上位システムがネットワークでつながり、さらにサプライヤーともつながっていて、まさにインダストリー4.0が描く工場そのものです。

そんなNEC米沢工場のマスカスタマイゼーションの秘密を探ってみましょう。

【NEC米沢工場とPC生産の進化の歴史】
1944年に設立された米沢工場は、1984年からノートPCの生産を開始。

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もともとPCはベルトコンベア方式で生産されていましたが、BTO(受注生産)の進展により、多品種変量生産に移り、NECでは1998年からセル生産方式になりました。

さらに2000年からは生産革新(統合SCM改革)がスタート。2004年にERPを基幹システムとし、RFIDなどIT活用を取り入れ、スピードを徹底的に追及していったそうです。

その結果、いまは生産台数は1日1万台になり、生産革新を始めた当初に比べて生産性8倍、棚卸し回転半減、デリバリー業界最短を実現しています。

【部品調達の工夫】
部品調達は3つのジャストインタイム調達方式を採用
・かんばん(国内調達品)
・保税JIT方式 (ベースユニット)
・VMI調達方式 (キーコンポーネント)

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1日16回 30分サイクルで工場に届けられます。

【スピードと管理の決め手はRFIDかんばん】
かんばんはRFIDかんばんを使用。

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かんばん情報は30分ごとにサプライヤに配信され、それにもとづいてサプライヤではRFIDかんばんが発行され、部品と一緒に工場に納入されます。

工場の受け入れ時の検品処理は、RFIDゲートシステムを通過するだけ。自動的に検品処理が行われ、受け入れた部品は部品ストアに一時保管されます。これにより部品待ちサイクルタイムを短縮し、ライン側の在庫は4分の1にできたそうです。

【RFIDの情報で進捗も管理】
各生産ラインの進捗状況はリアルタイムに把握され、部品供給が必要になるとRFIDピッキングカードが出力されます。

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部品担当はカードをセットした台車を押してアンテナの前を通ると、部品がある棚のランプが点滅。必要な部品の場所がすぐわかるようになり、数量も表示されてわかりやすくなっています(デジタルピッキング)。

これまでは部品の種類や棚を頭に入れておかなければならなかったが、このシステムによって誰でも簡単に確実に部品のピッキングができるようになりました。

ピッキングされた部品は自動搬送車で生産ラインに届けられます。
この自動搬送車は社内生産で、配送効率が4倍になったそうです。

【RFIDの情報で生産指示を確実に伝える】
1階はデスクトップパソコンの生産ラインです。
20本のラインを直線に配置し、全体が見通せるようになっています。

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2階はノートパソコンの生産ラインです。ラインは40本あります。
1本のラインの長さは5m程度。組み立てと検査、梱包工程を3人で分担して行います。

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すべての生産ラインにRFIDの生産工程管理システムが組み込まれ、生産指示情報が書き込まれたRFIDカードが自動的に排出されます。作業者がアンテナにRFIDカードを置くと、オンラインモニタに作るパソコンの仕様が表示され、作業者はそれに従ってパソコンを組み立てていきます。モニタには作業指示のほか、進捗状況や注意事項も表示されるそうです。

ドライバのゆれ防止機能や移動部品棚、自動ネジ締め機など、社内で作ったものが活躍しています。

【RFIDで部品もシリアルナンバーで管理 品質トレーサビリティ】
検査工程では棚にパソコンをセットすると、ソフトウェアを自動でインストールしていく。
自動外観検査装置やネジ締め確認機などが使われ、品質向上に勤めています。

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RFIDで9割以上の部品でシリアルナンバーを管理
マザーボードは実装される部品の8割をロットナンバーで管理し、品質トレーサビリティにつなげています。

さらに、これらの情報はすべてERPとひも付けられ、保守サポートでも活用されています。

【梱包工程でもRFIDを活用】
緩衝材は環境に優しいダンボールを使用。
梱包工程でもRFIDが活躍し、説明書や梱包品などもRFIDで管理され、組み立て工程と同様に、棚のランプ点滅などで作業を支援します。

【進捗状況も見える化 生産ラインの組み替えも可能】
進捗状況は、すべて生産ラインのRFIDによりリアルタイムで把握して見える化を実現。進捗に遅れが出た場合、生産ラインを組み替えるなど、柔軟で迅速な対応が可能。これにより工場の稼働率は10%向上しています。

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【30分サイクルで出荷 納期遵守率100%】
梱包されたパソコンは、出荷ストアで各方面別に集められます。統合デリバリーシステムで、30分サイクルで商品が出荷されていきます。一時的に製品在庫を半減し、納期遵守率100%を達成しました。

【人づくりはものづくり 上杉鷹山の教えにもとづく米沢生産方式】
米沢工場は人材育成にも積極的。改善提案活動のほか、女性目線による改善などが日常的に行われています。

また「ものづくり鷹山道場」という教育の場があり、新人がネジ締めや米沢生産方式のあり方を勉強できます。
また社内で使う自動化設備もここで作られているといいます。

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さて、NEC米沢工場の潜入動画いかがでしたでしょうか?

NEC米沢工場は、RFIDとかんばん方式を融合させ、見事に現場と基幹システム、サプライヤをつないで効率的な生産システムを作り上げています。これはまさにインダストリー4.0が目指す工場の形。とても勉強になる動画ですね。


出典:NEC米沢工場の紹介 NECPC Yonezawa JPN


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。