KKDを卒業する

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「仮説と検証」の思考回路を持っていますか?

1.「エレベーター渋滞」を改善したリクルートのアナログな方法

株式会社リクルートホールディングスは人材派遣、販促メディア、人材メディアを提供している大手サービス企業です。

そのリクルートには、東京・八重洲にあるトウキョウサウスタワーに移転してきたころから、問題となっていることがあります。

 

エレベーター渋滞です。

 

同ビルの23~41階が同社専用オフィスとなっています。

2階のメインエントランスからビル内に入り、23階フロアを経由して各階へ上がる仕組みになっているのですが、毎朝、この23階で大混雑が起きてしまうのです。

 

エレベーターが混んでいるせいで遅れてしまい、会議や打ち合わせに支障をきたせば、会社の損失となります。

そこで、リクルートは問題の解決に着手したのです。まず、混雑の原因として、3つの仮説を立てました。

 

(1)同じ時間帯に出社する人数が多すぎる

(2)各階に停車するのでエレベーターの往復に時間がかかる

(3)まだ満員になっていないのにエレベーターに乗らない人が多い

 

そして、仮説を検証するために下記のデータを取りました。

 

(1)2階で入館証をタッチしたデータで人数を把握する

(2)エレベーターの稼働ログで所要時間を把握する

(3)最大積載量の70%で発車している延べ台数のデータを把握する

 

いずれのデータからも、仮説が正しいと証明されました。

(3)については、最大積載量の70%を超えて発車したエレベータの割合は、21%にとどまっていたのです。

混雑を回避したいのなら、この割合を上げることが課題となります。

 

データで検証すれば、おのずと課題が見えてくるのです。

現状を数値化できるので、それと比較できます。

データで検証する意義は現状の数値化です。判断基準が明らかになります。

検証するとは比べることに他なりません。

(3)の仮設では「21%」が判断基準です。そこで、次に解決策の検討となります。

 

(3)での問題は、まだ満員でないのに、目前のエレベーターに乗車しない人が多いということです。

ただ、詰めればまだ乗れそうに見えても、自分からエレベーター内の人へ、「奥へ詰めてください」と言いうのはなかなかできません。

また、混んでいるエレベーターにおもいきって足を踏み入れ、重量オーバーのブザーが鳴ってしまっては、少々恥ずかしいです。

そんな理由で、満員になる前に乗車をためらう人が多いと考えられます。

 

ここで、もし、「詰めてください」と声をかける「第三者」がいたら、混んでるエレベータへ乗りやすくなるのではないか?

リクルートでは(3)を解決するために、このような仮説をさらに立てたのです。

そうして、検証のために実験をしました。

 

エレベーターにまだ乗車できそうなスペースがある場合に、総務スタッフがエレベーター内の人に「詰めてください」と声を掛けたのです。

するとエレベーターの1稼働あたりの積載率がアップしました。

最大積載量の70%を超えて発車したエレベーターの割合が21%から32%へ、1.5倍になったのです。

 

仮説が証明されました。リクルートでは(3)のために当面、総務スタッフが誘導するやり方を継続します。そして、仮説と検証には、データが重要な役割を果たしている、と感じたのではないでしょうか?

(出典:ダイヤモンドオンライン 2019年3月27日)

2.能動的に付加価値額を積み上げる

技術の世界で戦っている私たちは、進化する技術を使いこなし、さらには独自の工夫を加えて、価値を生み出しています。

進歩する工学、科学を儲かる形に変えているのです。

 

ここが、小売業や宿泊、飲食業、サービス業と異なる点と言えます。

ですから、技術の進化に応じて、仕事のやり方を変えなければ、生き残れません。

そうして、付加価値額を積み上げるのです。

付加価値額生産性を高める活動は2つあります。

 

・新たな付加価値額を積み上げる機会を生み出す新製品開発活動

・儲かる価格を設定しやすくする現場活動

 

両者ともに、狙いは、「変える」ことです。

 

・新たな収益源の新製品を生み出し、主力製品を変える。

・仕事の効率を高め、生産の流れを変える。

 

2つの「変える」で付加価値額生産性を高めます。

そして、この観点で仕事をするときに必要なのが、「仮説と検証」です。

「変える」ために、自ら考え、仮説を立て、検証しない限り、持続的な成果を手にできません。

能動的に付加価値額を積み上げたいときに欠かせない思考回路です。

3.仮説と検証、そしてデータ

市場が、右肩上がりで成長していたときは、下請け型の事業モデルでも、仕事が、ドンドンが舞い込みました。

そこでは、納期遵守が判断基準です。

顧客から提示された納期に従って、それさえ守っていれば、利益は、結果としてついてきました。

KKD(勘と経験と度胸)が幅を利かせていたとも言えます。

考える暇があったら、機械を回せという状況です。

 

しかし、時代は変わりました。

市場の成熟度は高まっています。

加えて少子化です。

人口も減少し、高齢化も進みます。

これまでのような需要増を、望むべくもありません。

親企業でさえ生き残りに必死です。

 

そうした中、中小製造企業が生き残るには、生産性を判断基準とした能動的なやり方へ、仕事の進め方を変えることが求められます。

詳細はセミナーやご指導で説明していますが、付加価値額生産性を高める先述の2つの活動を推進することです。

そして、必要となってくるのが「仮説と検証」です。

 

右肩上がりで成長している市場とは、見通しの良い広大なサバンナのようなものです。

そこでは、獲物となる動物が群れなして移動しています。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たります。

KKDで十分です。

考えるよりも、まず撃てです。

 

一方、成熟した市場はアマゾンの密林です。

密林に潜んでいる獲物を探し求めるようなものです。

やたらめったら撃っても、努力も無駄に終わるでしょう。

なにせ獲物は見えてないのですから。

 

まずは狙いを絞って、獲物が潜んでいそうなところへ近づき(仮説)、しっかり狙って撃ちます(検証)。

知恵を絞り狙いを定め、撃ってもダメだったら、仮説のやり直しです。

 

仮説をやり直したとしても、それは無駄ではありません。

やってはダメなことを証明したからです。

ご一緒に仕事をしている経営者で、現場に挑戦することを促している方がいます。

その経営者もおなじようなことを語っています。

 

「失敗しても、それをしたら失敗するということを学ぶので無駄ではありません。」

 

しかしながら、考えることなくアマゾンの密林で、サバンナでの対応をしていては問題です。

下手な鉄砲を数撃っていては、努力も徒労に帰すばかりではなく、組織としてのノウハウも積み上がらないでしょう。

 

獲物は、ますます奥地へ逃げてしまいます。

属人的な頑張りに終わるのです。

アマゾンの密林に潜んでいる獲物を探す場合、詰将棋のような、論理的なアプローチが、結局は、効率を高めます。

 

・マーケティングでは、顧客の潜在的な要望を仮定し、テストマーケティングやヒアリングを通じて検証します。

・生産技術や製造技術の開発では、要素技術のイノベーションを仮定し、実験を通じて検証します。

 

KKDに依存しない科学的なアプローチが仮説と検証です。

中小現場でも強化したい思考回路です。

リクルートのエレベーター渋滞では、検証のために、総務部スタッフによる声がけ実験をやりました。

 

さらに、「仮説と検証」で必要なものがあります。

それが判断基準、データです。

問題解決の糸口を探るのに、データで仮説を立て、データで検証することが欠かせません。

エレベーター渋滞では、最大積載量の70%以上の割合データを判断基準としていました。

 

生産性向上活動では、「仮説と検証」の思考回路を持つ必要があります。

そして、「仮説と検証」に欠かせないのがデータなのです。

したがって、これからの中小製造現場でも求められるのはデータ収集力だ、とお気づきではないでしょうか?

IOTはまさにそのための道具です。

少数精鋭で筋肉質の現場を目指す中小製造企業でこそ生かすべき道具がIOTであり、これは大手だけのものではありません。

4.KKDを卒業する

与えられた「納期」に焦点を当てる仕事のやり方だけで儲かる時代は終わりました。

これからは、「納期遵守」に加えて、付加価値額生産性に焦点を当てた仕事のやり方が求められます。

既存事業での需要拡大が見込めなければ、自ら、新たな市場や顧客を獲得するしかありません。

そのための生産性向上活動です。

受動的な仕事のやり方を能動的なやり方に変える必要があります。

そのための「仮説と検証」です。

そのためのデータです。

数値で仮説を立て、数値で検証をする思考回路が、経営者は当然のこと、現場にも求められます。

「仮説と検証」、そして「データ」。

KKDに依存した仕事のやり方を卒業します。

 

現場のデータを収集し「仮説と検証」で仕事を進めるしくみをつくりませんか?

 

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製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)