工程能力指数1.33で最低必要な検査コストを知る

工程能力指数1.33で最低必要な検査コストを知る

工程能力指数はお客様の要求品質を維持するための検査コストを見極めるときの判断基準のひとつになる、という話です。

1. 工程能力は不良率0.3%に相当するバラツキ

工程(生産設備)が持っている製造品質の均一性は「工程能力」で定義します。

バラツキを有した計測値の分布は、平均値と標準偏差(σ)で要約でき、工程能力は、標準偏差を使って、次のように定義されます。

工程能力 = ±3σ (あるいは6σ)

 

計測値が正規分布であると仮定すると製品寸法の値が±3σ(6σ)の範囲から外れる確率は約0.3%です。

製造した1000個のうち約997個が平均値を中心にした±3σのバラツキ範囲に入っていることを意味します。

逆にいうと1000個のうち3個は±3σの範囲外に存在するということです。

 

工程(製造設備)のバラツキが正規分布にしたがうと仮定した場合、標準偏差σが中心からどの程度バラツクかは標準偏差分布表から数値で読み取れます。

σを単位にしてバラツキを表現したとき、中心からの片側のバラツキは「σ」で、中心を挟んで両側のバラツキは「±σ」で表記します。

標準偏差分布表から読み取ると下表になります。

https://staff.aist.go.jp/t.ihara/normsdist.html

全体を1とした時、各バラツキ範囲にある確率(割合)です。

ですから1から上表の各数値を引いた数値がその範囲外に存在する確率(割合)です。

正規分布上に表記すると下図です。

平均値(μ)を中心にして±σ、±2σ、±3σの範囲にある割合(確率)を赤字で表記しています。

各バラツキの割合(確率)は上記の標準偏差分布表の数値です。

平均値(μ)を中心にした±σ、±2σ、±3σのバラツキ範囲外の割合は、それぞれ、約32%、5%、0.3%であることが分かります。

 

こうしたバラツキを持つ工程(製造設備)において所定の上限値と下限値を設定するのが公差です(緑点線)。

工程能力は±3σ(6σ)のバラツキに相当する計測値を我々に教えてくれます。

そして、工程能力は不良率0.3%に相当するバラツキです。

2. 工程能力指数1.33

公差によって不良率が決まります。

ですから、工程能力を睨みながら公差を決定するのが望ましい。

図面が確定し試作をしてみたらバラツキが大きくて不良多発!!という事態を避けるためです。

 

承認図方式で製品開発を進めるケースでは、開発途中での図面変更という負荷をお客様へかけないためにも重要です。

ですから、設定する公差がどの程度の不良率になるかを事前に検討することが必要です。

工程能力と公差を比較して決めます。

 

ここで、公差との相対関係で工程能力を示した工程能力指数を定義します。

工程能力指数 = 公差÷工程能力 = (上限値-下限値)÷ 工程能力

       = (上限値-下限値) ÷ 6σ

 

工程能力指数が1.00である時、公差は工程能力、つまり6σ相当を意味する。

1000個で3個の不良品が発生することが予測されます。

0.3%の不良率で目的の収益計画を達成できるならば、この水準を維持することに専念します。

 

問題があるならば、工程能力指数を向上させる。

その時の目標値に工程能力指数1.33があります。

工程能力は十分にあり、理想的な状態なので維持するべき状況と判断されます。

 

工程能力指数が1.33とは工程能力が±3σ(6σ)に対して1.33倍の能力を要求しています。

これは±4σ(8σ)を意味します。

工程能力指数 = ±4σ(8σ) ÷ ±3σ(6σ) =1.33

 

4σは99.9366%の割合なので、不良率が約0.07%。

1万個に7個の不良品が発生する水準です。

この数値が量産で目指すべきバラツキ水準のひとつの目標になります。

 

さまざまなケースがあるので一概にいえませんが、工程能力指数1.33ならば、製品によっては、全数検査に変えて抜き取り検査に変更する根拠にすることも可能です。

お客様との図面公差に関する交渉ではこうした数値を活用して現実的な仕様を最終決定します。

 

ちなみに、工程能力5σに相当する工程能力指数は、1.67。

工程能力指数 = ±5σ(10σ) ÷ ±3σ(6σ) =1.67

5σは99.999426%の割合なので、不良率が約0.0006%。

100万個に6個の水準です。

3. 工程能力指数は検査体制を考える判断材料にもなる

全数検査が品質保証の原則です。

ただし、お客様の要望や製品形態によって検査方法で検討の余地がさまざまです。

 

  • お客様へ納入する製品へ1個でも不良品の混入が許されない場合(不良品=人命へ危険をおよぼすケース)とある程度の不良品の混入が許容される場合
  • 全数検査が比較的簡単にできる場合と検査コストが小さくない場合
  • 検査費用対比で製品価格が安価な場合と高価な場合
  • 品質を保証するために破壊検査が必要な場合と不必要な場合

 

いろいろなケースが考えられます。ですから、原則的に全数検査を考えながらも、設定される公差から予測される工程能力指数等をベースに全数検査なのか、抜き取り検査なのかを決めます。

自社商品であるなら、こうしたことを自社基準に照らし合わせて決めます。

承認図方式等、仕様と価格の決定権がお客様にあるなら、事前にお客様と決めます。

 

工程能力指数は検査体制を決定する際の客観的な判断材料になります。

工程能力指数と出荷実績の相関から長期的に検査コストの最適化は図れます。

検査工程は自社製品の品質をチェックする極めて重要な工程ですが、お金をかければイイというわけではありません。

 

品質はあってあたりまえの仕様です。

ですから、お客様の要求品質を維持するための「最低の」検査コストを見極めます。

見極めるときの判断基準のひとつとして工程能力指数があります。

 

検査体制は経験からなんとなく決めている現場が多いです。

ですから、勘や経験ではなくこうした客観的な基準を活用して判断することで、他社にはない独自の判断ノウハウが積み上がります。

お客様の満足を維持させる品質を維持する最低コストを客観的に判断するノウハウです。

 

客観的な判断ができる現場は強いです。業務の必然性が明確で、目的、狙いがハッキリするからです。

闇雲に、一方的に指示のみを受ける状況下にある現場とは異なります。

ヤラサレ感がありません。やる気が引き出されやすいです。

まとめ

工程能力指数はお客様の要求品質を維持するための検査コストを見極めるときの判断基準のひとつになる。

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)