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呉ルネサス、目指すは「W杯優勝」 (竹本達哉,[EE Times Ja...

呉ルネサス、目指すは「W杯優勝」 (竹本達哉,[EE Times Japan])

「自信がなければ、引き受けていない」

 「日本の半導体業界は、業界出身者が何人も経営し、うまくいかなかった。私が持っている半導体業界以外の経営ノウハウを入れることで、うまくいく。傲慢(ごうまん)かもしれないが、それぐらいの自信がなければ、(ルネサスCEO職を)引き受けていない」

 2016年6月28日、ルネサス エレクトロニクスの社長兼CEOに就任した呉文精氏の会見での発言は、自信に満ちあふれていた。

 日本興業銀行(現みずほ銀行)、GEキャピタル・ジャパン、カルソニックカンセイCEO、日本電産副社長の経歴を持つ呉氏は、「私自身は半導体の種類も覚えきれていないほど、半導体の知識はない」と認めつつ、「半導体に関する知見は、全て社内にある」と半導体業界での経験不足は一切、意に返さない。カルソニックカンセイCEO時代、親会社であった日産自動車のCEO カルロス・ゴーン氏の言葉を借り「“答えは社内にある”。(経営を成功に導くため)適切な質問さえすれば、その答えは社内にある」とした。

実行力ある

 「ルネサスには、実行力がある。2013年10月以来、(事業構造改革策である)変革プランに取り組み、65%だった注力製品事業比率を91%に高め、工場も22ラインから12ラインに半減させ、従業員も約4万人から約2万人に減らした。同時に、工場、従業員が減っても、品質問題を出さず、営業利益率はマイナスから+15%まで大幅改善させるなど、顧客の信頼を維持している。これは、すごい実行力だ」と評価する。

 加えて「自動車やスマートシティーなど、重要な産業を支えための、“オセロの隅石”のような(要となる)技術をいくつか持っている点も強みだ」と分析する。

勝ち組の条件1=セグメント特化

 そうした可能性を秘めるルネサスで、呉氏が目指すのは「ワールドカップでの優勝」、すなわち、“世界ナンバーワン”の地位だ。とはいえ、世界半導体シェア1位を目指すわけではなく、「戦略的セグメントにおける“優勝”」を目指すという。

 呉氏は、IDM(垂直統合)型ビジネスモデル、水平分業型ビジネスモデルと変遷してきた半導体業界のビジネスモデルの主流として、今後、特定用途分野に特化した「セグメント特化型ビジネスモデル」が主流となり、セグメント特化が業界で勝ち組になるための条件の1つとして挙げた。

 「各セグメントでの競争は、世界3位でブレークイーブン(損益ゼロ)、4位や5位では、数年先はないというような、厳しい競争になる。競争に挑むには、優勝を目指し、結果、悪くても2位というぐらいでないといけない」と、セグメントに特化しながら、世界ナンバーワンを目指す姿勢が重要であると強調した。

 ルネサスが今後、優勝を目指していく具体的なセグメントについては、自動車制御・情報、産業、インフラなど向けの分野で設定していく方針で、「車載半導体、車載マイコンといった単位ではなく、車載マイコンの中でも4〜5つの領域に分け、そこから優勝を目指す戦略的セグメントを選ぶ。選ぶ上で自動運転やUSB Power Deliveryなど、これから市場が形成されるようなセグメントを重視しつつ、今秋ごろには30ほどの戦略的セグメントを決めて公表したい」という。

勝ち組の条件2=独立系半導体専業

 呉氏は、セグメント特化とともに、半導体業界で勝ち組になるための条件として、「独立系半導体専業」を挙げる。既に、ルネサスは事業母体3社(NEC、日立製作所、三菱電機)の出資比率を下げ、独立系半導体専業メーカーと呼べる状況にあるにもかかわらず会見中、独立系半導体企業であることの重要性を何度も強調した。

 現在、ルネサス株式の7割近くは、産業革新機構が持つ。その産業革新機構保有株の売却禁止期間が2015年9月に解け、産業革新機構は売却先を探している状況にある。売却先候補には、呉氏の出身企業でもある日本電産などが含まれ、ルネサスが特定企業の傘下に入る可能性もある。「株式の売却先は、産業革新機構が決めること」としながらも、経営の独立性が奪われる可能性のある特定企業の傘下に入る形での株式売却は「好ましくない」とし、けん制した形だ。

 「世界の半導体業界を見ても、機関投資家が半導体メーカーの株式を持っている場合が多い。既に、(トヨタ自動車やデンソー、パナソニックなど)多くの顧客から出資をいただき、パートナー関係にある。日本電産を含む顧客からも少しずつ株式を持ってもらうことはウエルカム(歓迎)だが、特定1社の傘下で、その特定1社の競合と取引できないというような状況は好ましくない」との見解を示した。

リスクをとって、成長する

 この日は、売上高など中長期的な数値目標は「2016年内には定め、発表したい」としたが、「営業利益率については、2015年度に達成した15%を維持したい」との方針を明かした。売り上げ面については、「現状、年間売上高7000億円に届かない程度になった。7000億円という規模は、事業母体3社がそれぞれ1社で売り上げていた額であり、それがちょうど3分の1になったということ。スマートで筋肉質な事業体制になったものの、グローバルで勝つためには、(売り上げ規模は)伸ばさないといけない」との考えを示した。

 加えて呉氏は、「これまでのルネサスは、1歩間違えれば、つぶれるという状況で、リスクをとらない経営をしてきた。サッカーに例えれば、セーフティに短い横パスを繰り返し、絶対にボールを取られない、ゴールを決められない、負けないサッカーをしてきた。しかし、勝つためにはリスクを取らなければいけない。これからは、100%パスが通るわけではないが勝ちに直結する可能性のある“キラーパス”を繰り出し、勝っていく。私は、今、社員にどんな“キラーパス”が出せるのか、質問しているところだ。答えは、社内にある」と語った。


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