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どうなる東芝メモリ?② 鴻海に買われたシャープのその後

どうなる東芝メモリ?② 鴻海に買われたシャープのその後

まだ予断許さない東芝の今後。

東芝メモリの買収金額は2兆円規模になると見られていますが、ここに来て日本企業の共同出資による日本連合や、台湾の鴻海精密工業が3兆円用意しているというニュースも出てきました。

同じように海外企業に買収された企業と言えば、直近ではシャープの例があります。

東芝と同じエレクトロニクス業界の大手で、しかも相手は今回も買収に関心を持っていると言われる鴻海精密工業。ちょうど1年前に取締役会で買収を受け入れ、8月から新経営陣で再スタートを切りました。

新体制になったシャープの半年は一体どんなものだったのでしょうか?軽く振り返ってみましょう。

業績は回復 営業利益、純利益は黒字転換へ 上方修正も

最も気になる業績の行方。

東証2部になりましたが、2月3日に発表された2017年3月期第3四半期の決算資料によると、売上こそ昨年より918億円少ない5715億円でしたが、収益は大幅に改善し、経常利益(167億円)、純利益(42億円)ともに黒字化を達成。コストダウンや構造改革による経費削減の効果が出たとのこと。さらに通期予想も上方修正しました。

今後、8K、IoT、有機ELなど核となる技術開発のほか、重要技術や人材確保などへの積極投資とグローバル戦略を強化して、2018年には東証1部への復帰を目指していると言われます。

※参考:シャープ、2017年3月期第3四半期決算資料

進む構造改革 信賞必罰の人事制度

次いで気になる人事の話。

買収が決まる前の2015年に希望退職制度で3234人が会社を去りました。

買収された当初は、さらに7000人リストラなんて話もありましたが、今のところは続報は出てきていません。ただ構造改革は進んでいて、人事制度にもメスが入っています。

具体的には

人員適性化で、配置転換や外部委託業務の内製化などを今も実行中。

人事制度では、信賞必罰をベースとした改革を行い、マネージャーの降格制度、社長特別賞与、役割等級制度、営業・技術インセンティブの拡充などを行っているとのこと。

信賞必罰、アメとムチの人事制度でコストカットと効率化、さらには社員の意識改革も促しています。

※参考:シャープ、2017年3月期第3四半期決算資料

業績好調で新規採用や特別賞与も

また、業績好調を受けてこんな話も

シャープ亀山工場、4000人に人員倍増へ

スマホカメラ部品生産のため、亀山工場で2000人近い新規雇用を計画なんてニュースも出てきています。

※参考:日経新聞、シャープ亀山工場、4000人に人員倍増 スマホ用カメラ部品も生産へ
※参考:毎日新聞、亀山工場、4000人に倍増 スマホカメラ部品生産へ

さらに

全社員に3000円の特別賞与を支給

3月31日に戴正呉社長は、業績回復を受けて全社員に金一封3000円を支給したとのこと。大人気のシャープ公式twitterでもつぶやかれ、その額の多寡や効果も含めていろいろと話題になりました。

※参考:日本経済新聞、シャープ社員に一律3000円を支給

さて、

鴻海精密工業の傘下に入ってから業績も回復し、順調に経営再建が進んでいるように見えます。雇用も守られており、当初の懸念だった技術だけ抜き取られて捨てられる、大リストラといったことは起きていません。

逆に新規雇用や特別賞与の話など、良いニュースの方が目立っています。

ただ、会社の方向性は大きく変わり、欧州市場へのテレビ再参入、中国・深センの家電研究開発センターの開設と中国・ASEAN地域への拡大戦略などグローバル市場への展開をより一層強くしています。こうしたなかで、今後も日本のシャープが主導権を握ったまま進めていけるかどうかは不透明です。

今後、シャープが日本にある意義や役割が明確にできなければ、本社や工場も含めて別の国に移転するなんてことも否定できません。そこが難しいところです。

東芝メモリの買収先はどこに。。。?

東芝の話に戻り、東芝メモリの買収先はどこになるのかというところですが、まだ確定情報は出てきていません。

台湾の鴻海精密工業をはじめ、韓国のSKハイニックス、中国の紫光集団、アメリカのウェスタンデジタル、マイクロンなどが関心を示していると言われています。先日、日本企業の出資による連合でなんて話も出てきました。

そこで半導体業界の識者の見方をご紹介します。

元半導体技術者にして技術コンサルタントの微細加工研究所 所長の湯之上 隆氏は、現在、応札すると名前が上がっている10社を星取表でまとめて整理し、その上で台湾のTSMCを一押ししています。世界最大のファンドリーであるTSMCであれば、東芝メモリのポテンシャルが一番発揮できるのではと予測。また鴻海精密工業や中国の紫光集団でも技術者が活躍できる可能性がありそうだとしています。

※出典:JBプレス、東芝メモリ買収、政策銀や革新機構は出てくるな!日本政府は、中国による東芝メモリの買収を外為法で禁止

また国際技術ジャーナリスト・News & Chips編集長の津田健二氏によると、最大の脅威、警戒すべきは中国と、韓国SKハイニックスとのこと。

中国は国策として半導体製造を掲げており、自前で作りたくて仕方がない。特にメモリには熱視線を送っている。また、SKハイニックスはエルピーダが倒産した時に買収検討と称して工場を研究し尽くして、その後に買わないといった前例があると解説しています。

さらに、日本は技術流出を防ぐことばかりに目が向いているが、新しい技術や研究が生まれていく環境や仕組みが必要だと指摘しています。まったく同意です。

※出典:News & Chips、東芝メモリを巡る買収額と技術流出

東芝の行方はまだまだ分かりません。引き続き注目していきたいと思います。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイトで編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。2016年5月〜「ものづくりニュース by aperza」編集長兼任。 趣味は釣りとダーツ